ラーンがいつものように大げさなジェスチャーで遺跡の入り口を指さした。
「さあ、イシェ!今日は必ず大穴を見つけるぞ!」
イシェはため息をつきながら、ラーンの背後から彼の装備を整えた。「またそんなこと言わないでよ。大穴なんて見つからないわ」
「いや、今回は違うって!ほら、この遺跡の地図見てみろ。」
ラーンは興奮気味に地図を広げ、イシェの指さす場所を熱心に眺めた。「ここ、この奇妙な記号…もしかしたら、何か重要なヒントが隠されているんじゃないか?」
「ラーン、あの記号はただの落書きだよ。何度も言ってるじゃない」
イシェは呆れたように言ったが、ラーンの目は輝いており、すでに遺跡の中へと足を踏み入れていた。イシェも仕方なく後に続く。
テルヘルは二人を少し離れた場所で静かに様子を伺っていた。彼女の目的は遺跡の遺物ではなく、ヴォルダンとの戦いに使える情報だ。だが、ラーンとイシェの存在は予想以上に有益だった。彼らは無謀で予測不能だが、その行動は時に予期せぬ成果を生むこともあった。
「あの二人には何か秘密があるかもしれない…」テルヘルはそう呟きながら、ラーンの後をついていった。
遺跡内部は暗く湿っていた。壁には苔が生え、床には石が崩れ落ちている箇所があった。ラーンは興奮気味に壁を叩いたり、床を蹴ったりしながら進んでいく。イシェは彼を注意しながらも、時折興味深い遺物を拾い上げてはテルヘルに見せていた。
「これは何?」イシェが小さな金属片を見せた。
テルヘルは目を細めて観察した。「これは…ヴォルダンの紋章に似ている」
ラーンは驚いて振り返った。「ヴォルダン?なんでこんな場所に?」
イシェも眉をひそめた。「まさか…」
テルヘルは「悪ふざけだ」と呟き、その場から離れた。彼女はヴォルダンが遺跡に関与している可能性を考え始めた。もしそうなら、この遺跡には重要な情報が隠されているかもしれない。
ラーンの無謀な行動で、予期せぬ方向へ話が進み始めた。テルヘルは状況の変化に冷静に対応し、自身の目的達成に向けて動き出す。そして、三人は遺跡の奥深くへと進んでいく。