「よし、今回はあの洞窟だ!」ラーンの豪快な声は、ビレーの朝焼けを突き破るように響いた。イシェはいつものように眉間に皺を寄せながら、地図を広げた。「また行き当たりばったりか? ラーン、あの洞窟は地元の人間ですら近づかないぞ。何か悍ましい噂があるらしい」
「そんなこと気にすんな! 宝物が見つかるかもしれないんだぞ!」ラーンの瞳は輝き、イシェの言葉は風のように通り過ぎていった。「それにテルヘルが報酬を上げてくれたんだよ? 今日は大穴を開けるぞ!」
テルヘルは薄暗い顔で、二人が準備する様子を見下ろしていた。彼女はヴォルダンへの復讐に燃える炎を抱いており、遺跡探索はその手段の一つに過ぎなかった。ラーンの無謀さは彼女の目には「利用価値がある」と思えたが、内心では彼らが悍ましい運命に巻き込まれることを危惧していた。
洞窟の入り口は、まるで巨大な獣の口のように開いていた。内部は薄暗く、不気味な静けさだけが支配していた。「ここは本当に大丈夫なのか?」イシェの声は震えていた。ラーンは気にせず進んでいったが、彼の背筋にもぞわぞわとした感覚が走った。
洞窟の奥深くで、彼らは巨大な石棺を発見した。その表面には複雑な文様が刻まれており、悍ましい邪悪さを漂わせていた。「これは…!」テルヘルが息を呑んだ。石棺から発せられるエネルギーは、彼女がかつてヴォルダンで目撃したものと酷似していた。
その時、石棺の蓋がゆっくりと開いた。中からは黒い煙が立ち上り、不気味な光が洞窟全体に広がった。ラーンは剣を構え、イシェは後ずさった。テルヘルは静かに呟いた。「これは… 私の復讐の鍵になるかもしれない…」
しかし、石棺から現れたのは、想像を絶する悍ましい姿の怪物だった。その目は血のように赤く輝き、鋭い牙がむき出しになっている。ラーンとイシェは恐怖で言葉を失った。テルヘルは冷酷な笑みを浮かべ、剣を抜きながら言った。「さあ、始まりの時だ…」