ラーンが石化した巨木に手をかけると、イシェは眉間にしわを寄せた。「またか? ラーン、本当にここに何かあるって思うのか?」
「いや、だってほら。この模様、見てみろよ。まるで生き物みたいじゃないか!」
ラーンの指先が巨木の表面をなぞる。確かに、苔むした石には何かの文字や模様が刻まれていた。イシェは息を呑んだ。それはただの模様ではなく、まるで脈打つような生命を感じさせるものだった。
「もしかして...?」
イシェの言葉を遮るように、遠くからテルヘルの声が響いた。「おい、二人は何をしている? 時間だ!」
ラーンとイシェは慌てて立ち上がった。巨木を見つめながら、イシェは小さく呟いた。「何か... 何かが息づいている気がする...」
ラーンの顔色が変わった。「そうか! これこそが、俺たちが探す大穴の鍵なのかもしれない!」
テルヘルは眉をひそめた。「何だ? また迷信でも始めたのか?」
しかし、イシェはラーンの言葉にわずかに共感を覚えた。巨木から発せられるかすかな熱気、そして脈打つような感覚。それはまるで、この遺跡がまだ息づいているかのような錯覚だった。
「よし、行こう!」
ラーンは巨木の背後にある暗い洞窟へと向かった。イシェは迷いながらも彼の後を続けた。テルヘルは不快な表情で二人を後から追った。
洞窟の奥深くには、かつて誰かが住んでいたような跡が残っていた。壁には奇妙な文字が刻まれ、床には朽ちた家具が散らばっている。そして、その中心には、巨大な石棺が置かれていた。
「これは...!」
ラーンの声が震える。石棺の表面には、巨木の模様と同じものが刻まれていた。イシェは胸の高鳴りを感じた。もしかしたら、本当に大穴に繋がる道なのかもしれない。
テルヘルは冷静に状況を分析した。「もしこれが真実に... この遺跡には何か大きな秘密が隠されているのかもしれない。」
三人は互いに顔を見合わせた。彼らの前に広がるのは、未知の冒険の始まりだった。