ビレーの朝の薄暗い路地裏。ラーンの豪快な笑い声が響き渡る。「よし！これで今日の食費は確保だ！」テーブルの上に並べられた硬貨の山を見つめ、ラーンは満面の笑み。イシェは眉間にしわを寄せながら、彼の背後から「そんな大穴には程遠いぞ」と呟いた。ラーンの豪快さに比べて、イシェは慎重で計算高い。遺跡探索の報酬は常に半分に分けられるが、イシェはいつもラーンの無計画さに呆れていた。
「お前は本当にいつか大穴を掘り当てると信じてるのか？」イシェは硬貨の山を見つめながら問いかけた。「あの遺跡は危険すぎるぞ。あの息づかいは…」イシェは言葉を濁す。あの遺跡の奥深くに潜む何か、それは彼らには理解できない息づかいだった。
「大丈夫だ！俺が守るからな！」ラーンは胸を叩きながら豪快に笑う。「それに、テルヘルさんが言うには、あの遺跡にはとんでもないものがあるらしいぞ。俺たちの人生を変えるようなものだ！」
イシェはラーンの言葉に苦笑する。「あの女の言うことは信用できんぞ。ヴォルダンへの復讐のために利用しているだけだろう」テルヘルは謎が多く、その目的もよく分からなかった。しかし、彼女の知識と戦闘能力は頼りになる。特に遺跡探索では、彼女の鋭い判断と交渉術が何度も危機を救ってくれた。
「まあ、いいさ。今日の報酬で、新しい地図を買おうかな」イシェは硬貨の山に視線を落とすと、小さく呟いた。「あの息づかいを確かめるためにも…」