ビレーの酒場が騒然となる中、ラーンはイシェの肩を叩き、ニヤリと笑った。「おいイシェ、あの噂聞いたか?またヴォルダンの奴ら、境の国に侵入してきたらしいぞ!」
イシェは眉間に皺を寄せた。「そんな話、どこから聞いたんだい?」
「酒場のおばあちゃんからさ。ヴォルダンが遺跡の調査隊を送ってきたって。そして、その中に…」ラーンは声色を落とす。「あの男の名前があったらしい」
イシェは息をのんだ。「テルヘルが…?」
ラーンの表情は曇った。「そうだな。あの男は、もう二度と戻らないと思ってたのに…」
イシェは静かに言った。「あの日、ヴォルダンに全てを奪われたのは、テルヘルだけじゃない。私たちも…」
ラーンは拳を握りしめた。「あの時のことを忘れるわけにはいかない。俺たちは…俺たちは、必ずヴォルダンへの復讐を果たすんだ!」
二人は互いの目を深く見つめ合った。そして、かつての誓いを改めて心に刻み込んだ。
翌朝、ビレーを出発するテルヘルの前に、ラーンとイシェの姿があった。
「準備はいいか?」テルヘルは冷たい視線で二人を見据えた。「あの遺跡には危険が潜んでいる。迷いがあれば、今すぐ引き返せばいい」
ラーンはニヤリと笑った。「大丈夫だ。俺たちは、どんな危険も乗り越えられる!」
イシェはテルヘルの視線から目を逸らさず言った。「私たちは、あなたと共に戦う」
三人は遺跡へと向かった。彼らの背後には、過去に失われたもの、そして未来への希望が重なり合っていた。