「おいラーン、あの遺跡の奥深く、地図には載ってない場所があるって聞いたんだけど…」イシェが慎重に言葉を選びながら言った。ラーンの視線は、テーブルに広げられた粗末な地図ではなく、テルヘルに向けられていた。彼女の鋭い眼光は、まるで彼らを dissection するかのように冷酷だった。
「あの遺跡はヴォルダン軍が以前調査したらしいぞ。危険だと言われている」イシェの言葉にラーンは少しだけ眉をひそめた。「そんなこと知ってて、なんで行くんだ？」
「報酬がいいからさ」ラーンの答えはあっけなかった。テルヘルは微笑みを浮かべた。その笑顔には、冷酷さと狡猾さが宿っていた。「危険を冒すほど価値のあるものがあるのよ」と彼女は言った。「そして、それが我々の目標に繋がるかもしれない」。
イシェはテルヘルの言葉を聞いて背筋が寒くなった。ラーンは彼女の言葉の意味を理解していなかったのかもしれない。だが、イシェはかつてテルヘルが語った過去を知っていた。ヴォルダンに全てを奪われた女性。復讐の炎に燃えるその瞳には、どんな犠牲も厭わない決意が宿っていた。
「よし、行くぞ！」ラーンの言葉にイシェは小さくため息をついた。彼にはまだ理解できないかもしれない。だが、イシェはテルヘルに従う理由を理解していた。それは、彼女が抱く復讐の炎を鎮めるためではない。
いつか、恩義を果たすために。