「よし、今回はあの洞窟だ!」
ラーンが拳を握りしめた。イシェは眉間に皺を寄せながら地図を広げた。
「また行き当たりばったりか? ラーン、あの洞窟は危険だって聞いたことがあるわよ」
「大丈夫だ、イシェ。僕に任せろ!」
ラーンの豪快な笑いに、イシェはため息をついた。彼らはビレーの小さな酒場でテルヘルと合流した。テルヘルは鋭い視線で二人を見据えた。
「準備はいいか?」
ラーンは剣を手に取り、イシェは道具袋を背負った。
「では、行こう」
テルヘルが先導し、三人は遺跡へと向かった。洞窟の入り口には、奇妙なシンボルが刻まれた石碑があった。
「これは...見たことのない記号だ」
イシェが石碑に手を触れた瞬間、地響きがした。洞窟の奥から不気味な光が漏れてきた。ラーンは興奮気味に剣を抜いた。
「これは大穴だと確信したぞ! イシェ、テルヘル、行くぞ!」
三人は光に向かって駆け込んだ。洞窟の中は狭く、湿った空気でいっぱいだった。壁には奇妙な模様が描かれており、不気味な雰囲気を漂わせていた。
「何かいる...」
イシェが呟くと、突然、巨大な影が襲いかかってきた。ラーンは剣を振り下ろしたが、影は素早くかわした。
「何だこれは!」
ラーンの攻撃をかわす影は、まるで煙のように動き回った。イシェは冷静に状況を見極めた。
「これは...幻影か何かだ。僕たちは罠にはまっている」
その時、洞窟の奥から声が聞こえてきた。それは優しい声でありながら、どこか懐かしい響きだった。
「心配するな、子供たち。私はあなたたちの恩人だ」
その声は、まるでラーンの心を解き放つように温かく、イシェの心を落ち着かせるように穏やかだった。影が消え、洞窟に光が差し込んできた。そこには、見慣れない女性の姿があった。
「さあ、子供たち。私はあなたたちに真実を教える」