ラーンがいつものように大げさな剣振りを披露すると、イシェはため息をついた。「また遺跡探して財宝だと？ そんな大穴なんて見つからないよ」
「見つかると信じていれば見つかるさ！」ラーンの笑顔には自信がみなぎっていた。しかし、イシェの目は違う場所を向いていた。ビレーの街並みを背に、ヴォルダンへと続く険しい山道。そこでイシェはいつも、テルヘルの言葉を思い出していた。「あの国に全てを奪われた。復讐のためには、どんな手段も厭わない」
テルヘルは遺跡探しの依頼をする際に、その目的を明かさなかった。ただ、イシェには彼女の言葉の裏側に、深い怨恨を感じ取れるものがあった。それは、ヴォルダンに対する憎悪ではなく、何かもっと根深いものだった。
「今日はこの遺跡で最後の調査だ」ラーンの声がイシェを引き戻した。彼は興奮気味に地図を広げ、「ここには古代文明の記録が残されている可能性が高いらしいぞ！」と話す。イシェは彼の熱意を理解する一方で、どこか落ち着かない気持ちを抱いていた。テルヘルが何を求めているのか、そしてその目的達成のために、彼らを利用しようとしているのか？
イシェは深く息を吸い、ラーンの後ろに立った。「よし、行こう」と呟いた。だが、彼女の心の中には不安が渦巻いていた。遺跡探しの冒険は、いつしか彼女たちを危険な場所へと導くかもしれない。そして、その先に待ち受ける真実とは一体何なのか？