ビレーの酒場が賑わう夜だった。ラーンはイシェの眉間に浮かぶ皺を見つめながら、酒をぐいっと空にした。「またあの顔か？今日はいい仕事したぞ！」
イシェは小さくため息をついた。「いい仕事をしたのは確かにだけど、テルヘルに言われたように『大穴』には程遠いよ。この遺跡探検の報酬で、一体何ができるんだ？」
ラーンの脳裏を一瞬、鮮やかな宝石が埋め尽くされた宝庫がよぎった。すぐに、イシェが眉間に皺を寄せるイメージがそれを覆い隠した。「いや、でもさ！いつか必ず大穴を見つけるさ！そうしたら、お前も好きなことして生きていけるだろ？」
イシェは目をそらし、「私は特に何もしたいと思わないわ」と静かに言った。
その時、テルヘルがテーブルに倒れ込んできた。「今日の成果は、ヴォルダンへの復讐には程遠い…」彼女は目を閉じ、深く息を吸った。「だが、この街には私の力を必要とする者たちがいる。彼らと共に、ヴォルダンに牙を向ける準備をするわ」
ラーンはテルヘルの言葉に少しだけ胸が痛んだ。イシェと違って、テルヘルには復讐という大きな目的がある。それはラーンの理解を超えるものだった。
酒場の喧騒の中、テルヘルはラーンに近づき、彼の耳元で囁いた。「今夜は一緒に仕事だ。君には特別な才能がある。それを活かして、ヴォルダンに近づきたい」
ラーンの視線はテルヘルの唇へと向かい、彼女の言葉の意味を深く理解した。彼はイシェを見つめ、少しだけ苦笑いした。「よし、わかった。お前と一緒に、あの女の復讐を手伝うよ」