ラーンの汗が、イシェの額を伝っていく。狭い通路で息も詰まりそうになりながら、彼らはテルヘルの指示に従い、遺跡の奥深くへと進んでいった。湿った土と石の匂いが鼻腔を刺激し、ランタンの火が揺らめく影は不気味に壁に映り込む。
「ここだ」
テルヘルが言った。彼女の目は鋭く、周囲を見回し警戒している。ラーンは彼女の姿を見て、胸の高鳴りを抑えきれなかった。あの冷酷な表情の下には、どんな情熱が渦巻いているのだろう?
イシェはテルヘルの指示に従い、壁に刻まれた古代の文字を丁寧に解読し始めた。ラーンの視線はテルヘルから離れず、彼女の細やかな指の動きを追っていた。その指先には、力強さだけでなく、どこか儚げな美しさがあった。
「ここには宝庫があるはずだ」
テルヘルの声は低く、力強い。ラーンは彼女が言うなら本当だと信じた。そして、この遺跡の奥底に眠る宝物と、テルヘル自身に秘められた謎を解き明かしたいという欲求に駆られた。
イシェが解読を終えると、壁の一部がゆっくりと開いた。その向こうには、黄金に輝く部屋が広がっていた。宝の山だ。ラーンの目は輝き、思わず息を呑んだ。だが、同時にテルヘルが彼らを見つめる鋭い視線を感じた。
「この宝物、すべて我のものだ」
テルヘルはそう宣言した。彼女の言葉は冷たく、そしてどこか寂しげだった。ラーンは彼女を理解しようとした。なぜこんなにも復讐に燃えるのか?そして、その裏にはどんな過去が隠されているのか?
イシェが宝の山に手を伸ばそうとした時、ラーンの視線はテルヘルへと向けられた。彼女の瞳の中に、何かが宿っていると感じたのだ。それは復讐心だけでなく、孤独と苦しみの影だった。