ラーンの手は震えていた。目の前に広がるのは、遺跡の奥深くへ続く崩れかけた通路だった。いつもならワクワクするはずの光景だが、今日は違う。イシェの表情も硬く、テルヘルは不気味なほどに静かだった。
「急げ」テルヘルの声が響き渡った。「時間がない」
ラーンは深呼吸をして剣を握りしめた。イシェが後ろから彼を押すようにして、通路へ入った。足元には不安定な石畳が広がり、天井からは崩れ落ちそうな岩がぶら下がっていた。
「ここは…おかしい」イシェが呟いた。「何か違う」
ラーンの背筋にぞっとする感覚が走った。いつもは遺跡に眠る静寂だが、今日は空気が重く、何かが彼らを急かしているようだった。
「 hurry up!」テルヘルが前方から声を上げた。
薄暗い通路の奥で、かすかに光が揺らめいているのが見えた。それは、遺跡の奥深くに眠るという伝説の宝「大穴」への入り口だったはずだ。
「早く行かないと…」イシェが言った。「何かが…近づいてくる」
ラーンは恐怖を感じながらも、足を動かした。彼らの前に広がるのは、未知なる闇と、急かされる時間だけだった。