ラーンがいつものように大口を開けて笑うと、イシェはため息をついた。「またそんな話か。いつまでそんなことを言ってるんだ」。ラーンの豪快な笑い声は、ビレーの遺跡探検隊の中でも際立っていた。彼はいつも未来への希望に満ち溢れていた。かつてこの街を襲った大災害以来、多くの人が諦めかけている中で、ラーンはその希望を象徴しているようだった。
イシェは彼とは反対で、現実主義者だ。遺跡探検で得たわずかな報酬を大切に貯金し、いつか安定した生活を送りたいと考えていた。しかし、ラーンの無邪気な笑顔と冒険心にはいつも心を揺さぶられた。
「大穴」という言葉が彼らの間を流れる度に、イシェは過去の記憶を思い出す。かつて、ラーンがまだ子供だった頃に、二人はビレーの遺跡で遊んでいた時だった。その時、ラーンの目は輝き、大きな宝が眠っているという話を熱く語っていたのを覚えている。「いつかあの大穴を見つけたら、二人で世界を旅しようぜ」とラーンは言った。イシェは何も言わなかったが、その言葉に胸が高鳴ったのを覚えていた。
その時、ラーンの後ろからテルヘルが近づいてきた。「準備はいいか？」彼女の冷たい声は二人の会話を遮った。イシェはテルヘルの鋭い視線を感じながら、小さく頷く。彼女はいつも冷静沈着で、目的のためには手段を選ばない。イシェは彼女のことをよく理解できない部分があった。
「今日は特に注意が必要だ」テルヘルは地図を広げ、遺跡の構造を説明する。「この遺跡には危険な罠が仕掛けられている可能性がある」。イシェは彼女の言葉に耳を傾けながら、ラーンの顔色を見つめた。彼はいつも通り、無邪気な笑顔を見せている。
遺跡の入り口で、イシェは深い息を吸った。いつもと同じように緊張感と期待感が入り混じっていた。そして、三人は遺跡へと足を踏み入れた。暗闇の中、イシェはラーンの背中にそっと手を置いた。彼の温かい体温を感じながら、イシェは小さく呟いた。「大穴を見つけられるといいね」。