「おい、ラーン！あの石柱、何か刻まれてるぞ！」イシェの声が、埃っぽい遺跡の奥深くから聞こえてきた。ラーンは、巨大な石棺の前に腰を下ろしながら、疲れ切った様子で答えた。「そうか？ 早く見せてくれよ、イシェ。俺の腹は減ってるんだ」
イシェが戻ってきた時、彼の表情は硬かった。「これは…古代ヴォルダン語だ。呪文のようなものみたいだが…」イシェは言葉を濁す。ラーンの顔色が少し変わった。「ヴォルダン？ なんでそんなところに…」
その時、テルヘルが後ろから近づいてきて言った。「それは重要じゃないわ。この遺跡の奥には何かあるはずだ。我々を雇った目的も、きっとそれにある」彼女の瞳は鋭く輝いていた。
ラーンは立ち上がり、石棺に手を伸ばした。「よし、開けてみよう」その時、イシェが彼の手首をつかんだ。「待て！ ラーン、あの呪文…もしかしたら…」
「どうでもいいだろ？ 大穴を掘り当てたいなら、危険も伴うのが当然だ！」ラーンの怒りが爆発した。イシェは言葉を失い、テルヘルは冷ややかな目で二人を見つめていた。
石棺の蓋がゆっくりと開くと、中から黒く深い闇が溢れ出した。ラーンの心には、不吉な予感がよぎった。そして、その闇の中に、彼を燃やすような怒りが渦巻いているのを感じた。それは、ヴォルダンへの怒りではなく、自分自身に対する怒りだった。彼は、この遺跡に潜り、危険と隣り合わせの生活を送っているのはなぜなのか？
「大穴」という夢を追いかけることの意味とは？ 答えのない問いに、ラーンの胸は締め付けられる。