ラーンの粗雑な剣さばきが埃を巻き上げ、遺跡の奥深くへと続く通路を照らす松明の火が揺らめいた。イシェは眉間に皺を寄せながら、足元を注意深く確認した。
「本当にここなのか？ いつもより迷路みたいで…」
「大丈夫だ、イシェ。ほら、あの壁画を見ろ！」
ラーンは興奮気味に、崩れかけた壁画を指さす。そこには、幾何学模様と不思議な記号が刻まれていた。
「これ、見たことあるぞ…テルヘルが言ってたやつじゃないか？ 何か重要な手がかりらしい」
イシェはため息をつきながらも、ラーンの背中に続くように進んだ。彼らはテルヘルの指示に従い、この遺跡に潜入していたのだ。彼女の目的は不明だが、高額な報酬と引き換えに、彼らは危険を冒して遺物を探し求めていた。
「よし、ここだ！」
ラーンが壁画の奥にある石扉を発見した。扉には複雑な鍵穴があり、テルヘルが用意した鍵がぴったりとはまった。扉が開くと、そこには広々とした部屋が広がっていた。中央には、黄金に輝く巨大な宝箱が置かれていた。
「やった！ついに大穴だ！」
ラーンの目は輝き、イシェも思わず息をのんだ。しかし、その瞬間、背後から冷たい声が響いた。
「待て」
テルヘルが剣を構え、二人の前に立っていた。彼女の瞳は冷酷に光り、表情には満足と残酷さが入り混じっていた。
「この遺跡の真の目的は、宝ではありません。ここに眠る古代の知識です。そして、その知識は私だけが手に入れるのです」
テルヘルはラーンに向かって剣を向けた。イシェは驚愕し、ラーンの顔色は真っ青になった。
「お前…裏切ったのか？」
ラーンの言葉に、テルヘルは嘲笑した。
「私はヴォルダンに全てを奪われた。そして、彼らに復讐するためには、あらゆる手段を使う必要があるのです」
彼女はゆっくりと歩き出し、ラーンとイシェに迫った。
「お前たちを利用したのは、目的達成のためだ。お前たちの忠誠心は、私にとって必要のないものだった」
イシェは恐怖で体が震えたが、ラーンの視線を感じた。彼はまだ諦めていなかった。彼の瞳には、仲間への深い信頼と、揺るぎない決意があった。
「イシェ…」
ラーンは静かに呟き、剣を構え直した。その瞬間、二人の間に戦いの火花が散り始めた。