「おいラーン、あの石碑、見てみろよ。」イシェが指さす方向には、苔むした石碑が倒れかかっており、一部文字が見えた。「古代語だ。ここに遺跡の地図が刻まれているかもな」。ラーンの目は輝き始めた。「よし、テルヘルにも報告して、明日の探索はここに決めだな!」
イシェは眉間にしわを寄せた。「待てよ、ラーン。地図なんて見つけたところで、ヴォルダンが狙っている遺跡だとしたらどうだ?あの女の目的は何なのか、よくわからないままリスクを犯すのは避けたい」。
「心配するな、イシェ。テルヘルが言うには、ヴォルダンに復讐するための手がかりがあるんだって。それに、俺たちはただの遺跡探検家じゃないぞ。大穴を見つけるために、どんな危険も乗り越える覚悟があるんだ!」ラーンの言葉は熱く、イシェの心を揺さぶった。
翌日、三人は石碑の近くで合流した。テルヘルはいつものように冷静沈着で、地図の場所を確認すると、鋭い視線でラーンとイシェを見据えた。「この遺跡には、ヴォルダンが最も欲しがるものがある。それを手に入れるためには、お前たちの力を必要とする。忠誠心と勇気を示せ。そして、報酬は必ず与えられる」。
ラーンの胸が高鳴る。イシェも、テルヘルの言葉に何かを感じ取ったようだ。三人は遺跡へと足を踏み入れた。石碑の地図が示す場所には、古代の宮殿跡が広がっていた。その中心には、巨大な石棺が安置されていた。
「ここだ!」ラーンの剣が光り輝く。「ヴォルダンに復讐する鍵はここに!」テルヘルはそう言ったが、彼女の目はどこか悲しげだった。イシェはラーンの背後から、石棺の様子を慎重に観察した。何か不吉な予感がする。
その時、突然、石棺の蓋が開いた。そこから立ち上る黒い霧が三人を包み込み、彼らの視界を奪った。
「何だこれは!」ラーンの叫び声は、霧の中に消えていった。イシェは恐怖と混乱の中、テルヘルの言葉を思い出した。「忠誠心と勇気を示せ」。
イシェは、自分を守るためにではなく、ラーンを守るために立ち上がった。そして、黒い霧の中に飛び込んだ。