ビレーの酒場で、ラーンが豪快に笑う。イシェは眉間にしわを寄せていた。「また大穴の話か?」と呟くと、ラーンは「いつか必ず掘り当てる!お前もその富で夢を叶えろ!」と胸を張った。イシェはため息をつき、視線をテルヘルに向けた。彼女は静かに酒を飲んでいた。
「今回はあの崩れた塔だ。地図には記されてない地下通路があるらしい」
ラーンが興奮気味に説明する。イシェはテルヘルの表情を見つめた。彼女の目は冷たく、何かを企んでいるかのようだった。「あの塔は危険だぞ。遺跡の奥深くに眠る魔物が目を覚ますと言われている」とイシェが言うと、ラーンの顔色が変わった。「そんな話は聞いたことない!大丈夫だ、俺が先頭に立って切り開く!」
テルヘルは静かに口を開いた。「私は危険を冒す価値があると判断した。報酬は約束通りだ。だが、もし何かあったら、私を第一に守れ」
ラーンの顔色はさらに曇った。イシェはラーンの視線を察し、小さく頷いた。「わかった。俺たちは君の安全を守る」
翌朝、三人は塔の入り口に立った。ラーンは剣を構え、「よし、行こう!」と叫んだ。イシェは深く息を吸い込み、テルヘルの後ろを歩いた。
地下通路は暗く、湿った空気で充満していた。壁には古びた文様が刻まれており、不気味な光がちらついていた。ラーンは先頭を切って進むが、イシェは足取りが重かった。彼女はテルヘルが何のためにこの危険な遺跡に来たのか、そしてなぜ自分たちを雇ったのか、理解できなかった。
やがて、彼らは巨大な石の扉の前にたどり着いた。扉には複雑な紋様があしらわれており、魔力が宿っているように見えた。ラーンは扉を押し開けようとしたが、 budge budge と動かなかった。「どうだ?イシェ、お前には魔法があるんじゃないか?」
イシェは否定した。「私はそんなもの使えない。テルヘルはどうだ?」
テルヘルは静かに手を伸ばし、扉の紋様に触れた。すると、扉に刻まれた紋様が輝き始め、扉がゆっくりと開いた。その先に広がるのは、広大な地下空間だった。中央には巨大な石棺が置かれており、その周りには金銀財宝が山積みになっていた。
ラーンの目は輝き、イシェは息をのんだ。テルヘルは石棺に近づき、手を伸ばそうとした瞬間、突然、石棺から黒い影が立ち上がった。それは巨大な魔物だった。
ラーンは剣を抜き、魔物に立ち向かった。イシェはラーンの後ろで、必死に呪文を唱えた。しかし、魔物は強すぎた。ラーンは魔物の攻撃を受け、倒れ込んだ。
イシェは絶望した。その時、テルヘルが前に出た。「お前たちは私を守ると言ったはずだ」と冷たく言った。そして、彼女は自ら剣を取り、魔物に立ち向かった。
テルヘルは驚異的なスピードと力を持って魔物を攻撃した。その姿はまるで狂戦士のようだった。イシェは呆然と彼女を見つめた。なぜこんなにも強く、なぜこんなにも忠義を尽くすのか。
テルヘルは魔物との戦いに勝利し、石棺を開けた。そこには、ヴォルダンに奪われた大切な遺物が入っていた。彼女は遺物を手に取り、満足げな笑みを浮かべた。そして、ラーンとイシェに言った。「お前たちも報酬をもらおう」
イシェはテルヘルの言葉に戸惑いを感じた。彼女がなぜ自分たちを雇ったのか、その理由はまだ分からなかった。しかし、ラーンの忠義心は揺るぎないものだった。彼はテルヘルのために命を懸ける覚悟を決めた。そして、イシェもまた、彼らと共に未来へ向かうことを決意した。