ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑っていた。「また遺跡から何も見つからなかったって？ 今回は本当に Cursed だな！」
イシェはため息をつきながら、テーブルの上の空になった酒瓶を数えた。「五本目だ。今日はもう諦めて帰ろうよ。」
ラーンの笑顔は一瞬曇ったが、すぐにいつもの明るさを取り戻した。「いや、まだ諦めるには早すぎるぜ！ 次はきっと大穴が見つかる！」
「大穴か…」イシェは呟いた。ラーンの言葉を聞いても、イシェの心には何も響かなかった。大穴とは、ビレー周辺の遺跡に眠ると伝えられる、莫大な財宝と伝説の遺物が入った場所のことだ。ラーンにとって、それは夢であり目標だった。しかし、イシェにとっては、いつまでも続く空虚な希望に過ぎなかった。
「イシェ、お前も諦めてるんじゃないだろうな？」ラーンの問いかけに、イシェは小さく頷いた。「あの遺跡は…」
イシェの言葉を遮り、テルヘルが静かに口を開いた。「私は何かを感じた。あの遺跡には、何か隠されている。」彼女の目は鋭く輝き、まるで闇を照らす灯のように強く燃えていた。
「何？」ラーンが興奮した様子で尋ねた。
テルヘルはゆっくりと答えた。「忘却。あの遺跡に眠るものは、忘れ去られた歴史の断片だ。それを解き明かすことができれば…」彼女は言葉を濁すように続けた。「私たちは、真実を知る。」
イシェはテルヘルの言葉に胸を締め付けられるような感覚を抱いた。忘却…それは、過去の人々にとって苦い記憶であり、今となってはほとんど失われた歴史のことだった。なぜテルヘルはそんなものを求めるのか？ イシェは彼女の真意を見抜くことができなかった。
しかし、イシェの心には、どこかで小さな希望が芽生えていた。
もし、テルヘルの言うように、遺跡に真実が眠っているなら…。それは、ラーンの大穴とは違う意味での宝になるかもしれない。そして、イシェ自身も、これまでの人生を振り返り、何かを見つめ直すことができるのかもしれない。