ラーンの豪快な笑い声がビレーの朝の静けさを破った。「よし、今日は必ず何か面白いもんが見つかるぞ！」 彼は大きな剣を背負い、イシェに向かってニヤリと笑った。イシェはいつものように眉間にしわを寄せ、地図を広げた。「今日の目標はあの崩れかけた塔だと言ったはずよ。ラーン、また無茶なことを企てないで。」
「心配いらないって。イシェには俺が守ってやるからな！」 ラーンはそう言って、石畳の上を軽快に駆け出した。イシェはため息をつきながらそのあとを追った。テルヘルは二人を見つめ、唇をわずかに曲げた。「あの二人は一体何を求めているのだろうか…」
遺跡の入り口には、錆びた鉄格子と崩れかけの石柱が立ち並んでいた。ラーンは軽々と格子をこじ開け、「さあ、イシェ、行くぞ！」と叫んだ。イシェは彼に続くように中へ入った。テルヘルは少し遅れて、周囲を見回しながら進んだ。
遺跡内は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。崩れた壁からは時折小石が落ちてきた。ラーンは目を輝かせながら、壁のひび割れを指さした。「ここだ！何かあるぞ！」 イシェは慎重に足場を確認しながら近づいた。すると、壁の奥に小さな隙間が見えた。ラーンの興奮が高まる中、イシェは懐中電灯で隙間の中を照らした。そこには、金色の光沢がする小さな箱があった。
「やった！大穴だ！」 ラーンは歓声を上げ、箱を引き出そうとした。しかし、箱は重く動かなかった。「なんだ？固い…」 イシェが近づき、箱の上部を指さした。「これは…鍵がかかっている。」 ラーンの顔色が曇り始めた。「鍵がないと開けられないのか…」
テルヘルは冷静に状況を判断していた。彼女は遺跡の奥深くで何かを見つけたようだった。「待ってください。」 彼女は振り返り、崩れた石柱の間にある小さな隙間を指差した。「あそこに何かあるかもしれません。」 ラーンとイシェが驚いて振り返ると、そこには小さな銀色の鍵が落ちていた。
「まさか…」 イシェの目を見開いた。「これは…！」 ラーンは鍵を拾い上げ、箱に差し込んだ。鍵はぴったりと合い、箱が開かれた。中からは、美しい宝石と古い巻物が取り出された。ラーンは興奮して宝石を手に取ったが、イシェは巻物に目を向けた。
「これは…」 彼女の表情が硬くなった。「これは何か重要な情報が書かれているかもしれない…」 すると、テルヘルが急に振り返り、石畳の上を見つめた。「あれは…」 彼女は小さく呟いた。「忘れ物だ。」 イシェとラーンの視線を追うと、そこには小さな銀色の箱があった。
その箱には、「ヴォルダン」という文字が刻まれていた。