「おい、イシェ、見てみろよ、これ!」ラーンが興奮気味に石版を掲げた。イシェはため息をつきながら近寄り、その表面の複雑な刻印をじっと見つめた。
「また意味不明な記号か。ラーン、本当にこれで大穴が見つかるのか?こんなことばかり繰り返して…」
「いや、今回は違う!この記号、どこかで見たことがあるんだ。」ラーンの目は輝いていた。「あの遺跡の壁画に…」
イシェは彼の熱意を理解しようとしたが、過去の失敗を思い出すたびに心が重くなった。彼らを雇ったテルヘルは、いつも冷静で目的意識の高い女性だが、その冷酷さも感じてしまうのだ。特に最近、彼女の目つきが鋭く、何か隠しているようにも思えてならない。
「あの遺跡は危険だぞ、ラーン。あの忌まわしい場所には近づかない方がいい。」イシェの言葉にラーンは一瞬戸惑ったが、すぐにいつもの豪快な笑みに切り替えた。
「大丈夫、イシェ!僕たちにはテルヘルがいるだろ?彼女ならどんな敵も倒せる!」
だがイシェは不安を拭い去ることができなかった。テルヘルの目的、そしてこの遺跡の謎。そして、彼らに降りかかるであろう、避けられない運命…。
日暮れ時の薄暗がりの中、彼らは遺跡へと足を踏み入れた。石造りの壁には、不気味な影が伸びていた。イシェは背筋を寒さで震わせた。何かが迫っているような、そんな予感がしたのだ。