「よし、今回は絶対に成功だ！」
ラーンが拳を握りしめると、イシェは眉間にしわを寄せた。
「またそんなことを言う…」
ビレーの朝焼けに照らされ、遺跡の入り口前に立つ三人の影。いつも通りの光景だが、今日は何か違う空気が流れている。それはテルヘルの瞳に宿る冷酷な光と、ラーンの不気味なまでの確信から感じ取れる。
「今回は違う。あの書物には記されているんだ。ここには必ず大穴があるはずだ」
ラーンの言葉は揺るぎない自信に満ちていた。イシェは彼の熱意に押されるように、小さく頷く。テルヘルは静かに剣を研ぎ澄まし、鋭い視線で遺跡の奥深くを見つめた。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気が鼻腔をくすぐる。足元には朽ち果てた石畳が広がり、壁には謎の文様が刻まれていた。ラーンは先陣を切って進み、イシェは彼の後ろをついていく。テルヘルは二人から少し離れて、警戒を怠らなかった。
「ここだ！」
ラーンの声が響き渡る。目の前には巨大な石扉があった。扉には複雑な模様が刻まれており、まるで生きているかのように脈打しているように見えた。
「この扉を開けば大穴がある…。」
ラーンの瞳に狂気が宿り始めた。イシェは不安を覚えるが、ラーンの熱気に圧倒されてしまう。テルヘルは冷静さを保ちながら、扉の模様を分析していた。
「この扉を開けるには特殊な鍵が必要だ…」
テルヘルの言葉が、ラーンの熱狂を冷やすように響いた。
「鍵は？」
イシェが尋ねると、テルヘルはにやりと笑った。
「すでに手に入れている」
彼女は小さな袋から、輝く宝石を取り出した。それは遺跡の奥深くに眠る、伝説の宝である「星影の涙」だった。
「この宝石を扉に捧げれば、大穴への道が開かれる…」
テルヘルの言葉に、ラーンとイシェは息をのんだ。星影の涙は、単なる宝物ではない。ヴォルダンに全てを奪われた彼女にとって、復讐を果たすための鍵でもあった。
「これで…すべて手に入る」
テルヘルは宝石を扉に差し出した。その時、遺跡の奥から不気味な音が響き渡った。それはまるで、眠りから覚めた獣の咆哮のようだった。