「おい、イシェ、どうだ?今日は何か掘り出せそうだぞ!」
ラーンが、遺跡の入り口で腕を躍らせている。イシェは、彼の無茶な行動に眉間に皺を寄せながら、慎重に足場を確認する。
「ラーン、落ち着いて。ここは以前崩落した場所だぞ。あの石碑も半分埋まっているんだ」
「ああ、わかってるって。でも、ほら、この苔むした壁には何か刻まれてるじゃないか。もしかしたら地図かもな!」
イシェはため息をつきながら、ラーンの背後から石碑の文字を写し取っていく。テルヘルは、二人が遺跡内部で議論している様子を、少し離れた場所でじっと観察していた。彼女は、この遺跡の奥深くで眠るという伝説の遺物「月の涙」を狙っている。その輝きは、ヴォルダンとの戦いに必ず役立つだろう。
「あの二人には、まだまだ危険な仕事はさせられない」
テルヘルはそう呟きながら、小瓶に入った赤い薬を握りしめる。それは、緊急時に使うための麻酔薬だ。
その時、遺跡の入り口から慌てた様子で男たちが駆け込んできた。
「みんな、逃げろ!兵士たちが来たぞ!」
男たちの言葉に、ラーンとイシェは顔を見合わせた。
「兵士って…まさか徴用か?」
イシェの言葉にラーンの表情が曇る。
「じゃ、あの遺跡は諦めるしかないのか…」
テルヘルは、二人の様子を冷静に見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「いいえ、まだ諦めるには早いです。あの兵士たちは、遺跡の調査に来た可能性が高い。我々も彼らを利用できるはずです」
彼女は、ラーンとイシェに冷たい視線を向け、計画を告げた。
「今こそ、我々が動き出す時だ」