ラーンが巨大な石門の前で立ち尽くし、眉間に皺を寄せていた。イシェは小さく溜息をつきながら、彼の肩を軽く叩いた。
「どうしたの、ラーン?また大穴が見えたとでも言うつもりかい?」
ラーンの視線が、石門の上にある複雑な彫刻に注がれていることに、イシェは気付いていた。そこに描かれていたのは、幾何学模様の中に人型のシルエットが組み込まれた奇妙な図柄だった。かつて見たことのないもので、ラーンは目を輝かせながら、指でその輪郭をなぞっていた。
「いや、違うんだ。この遺跡…何か違う気がするんだよ。イシェ、この彫刻…もしかして…」
ラーンの言葉は途絶え、彼は石門に手を伸ばそうとした。その時、後ろから声がした。
「触るな。」
テルヘルが静かに近づき、ラーンの腕を掴んで引き戻した。鋭い視線で石門を見つめ、彼女は薄く唇を噛んだ。
「この遺跡は、ヴォルダンにも危険な場所だと伝えられていた。我々がここに踏み入るべきではない。」
ラーンの顔色が曇る。イシェはテルヘルの言葉に納得するようだった。しかし、ラーンは諦めなかった。
「でも、あの彫刻…何かを感じたんだ。きっと何か大きなものが見つかるはずだ。あの大穴…」
彼は再び石門を見つめた。その瞳には、冒険心と執念が燃えていた。イシェはラーンの顔色を見て、小さくため息をついた。テルヘルは静かに微笑みを浮かべながら、彼らを見下ろした。
「わかったわ、ラーン。あなたが望むなら、私はあなたを導く。」
彼女は石門の脇に置かれた小さなレバーを見つけ、ゆっくりとそれを動かした。石門が轟音と共に開かれ、内部へと続く階段が現れた。ラーンの顔は喜びで満ち溢れ、イシェは不安げな表情を見せた。テルヘルは微笑みを深めながら、三人に続くように言った。
「さあ、準備はいいかい?いよいよ、私たちの運命が動き出す時だ。」