ビレーの粗末な酒場で、ラーンは酒を煽りながら豪快に笑っていた。イシェは眉間にしわを寄せながら彼の背中に手を当てていた。「また遺跡でトラブルでも起こしたのか?」
「違うよ、今回は大漁だったんだ!」ラーンは胸を張った。「あの古代の壺、確かに価値あるものだったな!」
イシェはため息をついた。「価値があるってのは誰が決めたの? 壺を売る店だって、結局はテルヘルが交渉するんでしょ?」
「まあな」ラーンは少しだけ肩を落とした。「でも、あの壺は俺たちが発見したんだぞ! それだけで十分じゃないか?」
イシェは諦めたように席に戻った。ラーンの楽観的な性格にはいつも呆れていた。しかし、彼の無邪気さは、イシェ自身をどこか安心させてくれた。
「ところで…」イシェはテルヘルの方を向いて言った。「次の遺跡はいつ行くんだ?」
テルヘルは静かに酒を飲んでいたが、その瞳に燃えるような光が宿っていた。「準備は整った。明日、夜明けとともに出発する」
ラーンが目を輝かせた。「よし! 今日はいっぱい眠って、明日のためにエネルギーチャージだ!」
イシェは彼を見つめ、複雑な表情を浮かべた。ラーンの無邪気さとは対照的に、テルヘルの目的は明確で冷酷だった。彼女は復讐のために、遺跡の探索を利用しているのだ。イシェは、いつしか彼女が自分の思惑通りに動かしにくくなる日が来るのではないかと不安を感じていた。
翌朝、薄暗い遺跡の中を進む3人。ラーンの無邪気な笑いは、イシェの心をわずかに温めた。しかし、テルヘルの冷たい視線は、彼らを深い影の中に閉じ込めていくようだった。
「ここだ」テルヘルは突然立ち止まった。「この遺跡には、ヴォルダンが隠した秘密がある。それを手に入れるためだ」
ラーンは何も考えずに頷いた。イシェはテルヘルの言葉に胸を締め付けられる思いをした。彼女は本当に復讐を果たすことができるのだろうか?そして、その代償は何になるのか?