埃っぽい遺跡の入り口でラーンが巨大な石扉を押していた。「おい、イシェ、ちょっと手伝ってくれよ！」。イシェはため息をつきながら近づき、ラーンの肩に手を当てて力を加えた。「本当にここを開ける必要があるのかね？」「もちろんだ！ほら、テルヘルが言ってたろ？この遺跡には大穴があるって！」ラーンは目を輝かせた。イシェは内心苦笑した。ラーンの「大穴」熱は冷めやらぬ。だが、テルヘルが言うように、この遺跡の奥には何かあるはずだと信じているのは彼だけではない。「よし、開いたぞ！」二人が力を合わせた途端、石扉がゆっくりと音を立てて開いた。
中に入ると、薄暗い通路が広がっていた。ラーンの顔は興奮で紅潮していた。「さあ、イシェ！宝の山が待っているぞ！」ラーンは先頭を走り出した。イシェはテルヘルの影に隠れるようにして後ろをついていった。テルヘルは静かに周囲を見回し、何かを探しているようだった。
「ここは…」イシェが呟いたとき、突然地面が揺れ始めた。天井から石が崩れ落ち、ラーンは慌てて身をかわした。「何だこれは！」ラーンの声は恐怖に染まっていた。その時、テルヘルが鋭い声を上げた。「罠だ！逃げろ！」
三人は必死に走り出す。後ろから追いかけてくる巨大な岩石の塊の音だけが聞こえる。イシェは振り返らずに走り続け、息を切らした。ラーンの足取りが遅くなっているのがわかった。「ラーン！」イシェは振り返ると、ラーンが転倒し、岩石の塊に押しつぶされそうになっている。
「やめてくれ！」イシェは叫びながら駆け寄り、ラーンを引きずり上げた。二人はなんとか難を逃れたものの、傷だらけで息も絶え絶えだった。「あの…あの遺跡、一体…」イシェが言葉に詰まった。テルヘルは冷静に言った。「この遺跡には、ヴォルダンが隠した罠があるのだ。そして、その目的は…」彼女は目を細め、「復讐だ」。