「よし、今回はあの崩れかけた塔だ!イシェ、地図確認してくれ!」ラーンが目を輝かせ、遺跡の入り口に向けて走り出した。イシェはため息をつきながら地図を広げた。「また、行き当たりばったりか…」
「今回は違うぞ!あの塔の奥に眠るらしい、古代の音楽器だ!それを手に入れれば、大金になるぞ!」ラーンの興奮が伝染するかのように、イシェも少しだけ期待感を抱いた。
「でも、あの塔は危険だって聞いたことがあるわ…」「大丈夫!俺が守るから」ラーンは胸を張った。イシェは彼の無謀さに呆れつつも、彼には頼りないながらも仲間としての信頼があった。
遺跡の入り口は崩れており、足元は不安定だった。テルヘルは慎重に歩を進めた。「ここはヴォルダン軍が以前調査した場所だ。何か罠が仕掛けられている可能性がある」彼女の鋭い視線は周囲をくまなく見渡した。
塔の中は薄暗く、埃が舞っていた。壁には古びた絵画が描かれており、かつて栄えた文明の痕跡を感じさせた。ラーンは興奮気味に進んでいくが、イシェは慎重に足取りを進める。テルヘルは常に警戒を怠らなかった。
奥へ進むにつれて、空気が重くなり始めた。不気味な音が聞こえるようになり、イシェは背筋が寒くなった。「何かいる…」彼女は小声で言った。ラーンの顔色が変わった。「何だ?」
その時、壁から突如、巨大な影が飛び出して来た!ラーンは剣を抜き、反射的に敵に向かっていった。しかし、その影はラーンの攻撃をかわし、イシェに向かって襲いかかった。
イシェは驚愕し、立ちすくんだ。その時、テルヘルが素早く動き、影の動きを封じた。「お前は誰だ!」テルヘルは冷酷な声で言った。
影はゆっくりと姿を現した。それは、かつてヴォルダン軍に仕えていた戦士だった。彼はボロボロになった鎧を身にまとい、憎しみと狂気のこもった目で二人を見つめていた。「復讐…ヴォルダン…全てを奪った…」彼の言葉には深い悲しみと怒りが込められていた。
ラーンは剣を構え直した。「お前が誰なのかは知らないが、イシェを傷つけたら許さないと!」彼は仲間を守るために立ち向かう決意をした。テルヘルも同様に剣を抜いた。
三人は影との戦いを始めた。激しい攻防が続く中、イシェは冷静に状況を見極めていた。彼女は影の動きから、彼の弱点を見抜き、ラーンとテルヘルに指示を出した。
戦いの最中、イシェは影の言葉から、ヴォルダンによる残酷な真実を垣間見た。そして、テルヘルがヴォルダンへの復讐を誓う理由も理解した。
やがて、三人の力によって影は倒れた。静寂が戻った遺跡の中で、イシェは深く息をついた。ラーンとテルヘルも疲弊しきっていた。
「あの音楽器は見つからなかった…」ラーンの肩が落ち込んだ。「今回は仕方がないな…でも、また遺跡を探そうぜ!」彼はいつものように明るく言った。イシェは彼を微笑んで見ていると、心の奥底で何かがゆっくりと動き始めた気がした。それは、かつて失っていた希望のようなものだった。
そして、テルヘルは影との戦いの後、ヴォルダンへの復讐への決意がさらに強まったのを感じた。しかし、同時に、ラーンとイシェとの出会いが、彼女の中に新たな光を灯す可能性も秘めていることを知った。