ビレーの tavern の薄暗い店内に、ラーンが酒を片手に大声で話していた。「おい、イシェ!あの遺跡の奥底には、絶対何かあるって言ってんだろ?金貨の山か、宝石か、それとも伝説の魔法の剣だ!」
イシェはため息をつきながら、ラーンの言葉を遮った。「またそんな話?」
「違うんだって!今回は本気で感じるんだ。あの日、あの洞窟で感じた奇妙な魔力…あれはただの幻じゃない!」
ラーンの瞳は熱を帯びていた。イシェは彼の様子を見て、いつも通り微笑ましく頷いた。だが、内心では不安がよぎっていた。ラーンは最近、遺跡探査中に妙に興奮気味で、以前より危険な場所へ入ろうとするようになっていた。
その時、扉が開き、テルヘルが入ってきた。彼女は黒曜石のような瞳を鋭く見据えながら、「準備はいいか?」と冷たく言った。ラーンとイシェは互いに頷き合った。
「よし、出発だ。」
三人は tavern を後にし、月の光が差し込むビレーの道を歩いた。目的地は、かつてヴォルダンに滅ぼされた小さな村跡地にある遺跡だった。テルヘルは、その遺跡に隠された秘密を解き明かすために、ラーンとイシェを利用していた。彼女にとって、それはヴォルダンへの復讐を果たすための鍵となるはずだった。
遺跡の入り口に立つと、冷たい風が吹き荒れ、不気味な影が彼らを包んだ。「ここは以前から探索した場所だ。」イシェが言った。「特に何もない場所だぞ?」
「違う。」テルヘルは静かに言った。「今回は違う。何かを感じている。」彼女の目は、遺跡の奥深くに沈むように、鋭く光っていた。
三人は遺跡の中へと足を踏み入れた。狭い通路を進むにつれて、壁には不思議な模様が刻まれており、空気に奇妙な緊張感が漂っていた。ラーンは剣を握りしめ、イシェは周囲を警戒しながら歩を進めた。
奥深くまで進むと、巨大な石の扉が現れた。扉には複雑な鍵穴が彫られており、テルヘルが持ってきた古い地図を頼りに解読を試みた。
「これは…!」イシェは驚愕の声を上げた。「この記号…以前、ヴォルダンの書物で見たことがある!伝説の『神託の石』…」
扉が開くと、そこには輝きを放つ巨大な石が安置されていた。その石は、かつてヴォルダンに奪われた「神託の石」だったのだ。テルヘルは目を輝かせ、ゆっくりと石に近づいていった。
その時、背後から不気味な声が響いた。「何をしているんだ?」
振り返ると、そこには黒装束をまとったヴォルダンの兵士たちが立っていた。
「まさか…!」イシェが驚きの声を上げた。
ラーンは剣を抜くと、兵士たちを相手に戦いを挑んだ。テルヘルは石に触れようとしたが、兵士たちに阻まれた。「諦めるな!これは私の復讐だ!」
激しい戦闘が繰り広げられる中、イシェは何かを思い出したように、慌てて石の周りを走り始めた。「待て!あの記号…!」
イシェは石に刻まれた記号を指さし、「これは…復帰の儀式だ!」と叫んだ。
その瞬間、石から強烈な光が放たれ、周辺の兵士たちを吹き飛ばした。そして、光の中からは、一人の女性の姿が現れた。彼女は美しい黒髪とエメラルドグリーンの瞳を持ち、強力なオーラを放っていた。
「私は…この地に封印されていた者…。」女性は静かに言った。「汝らが私の封印を解き放った…」
三人は驚き、言葉を失った。目の前に現れた女性こそ、ヴォルダンに滅ぼされた村の巫女であり、伝説の存在だったのだ。彼女の復帰が、世界を大きく変える予兆となることを誰も知らなかった。