ラーンがいつものように大口を開けて笑うと、イシェはため息をついた。「また大穴の話か？ そんな宝なんて、この遺跡探しの何十年も前から噂だけだ。」
「でもいつか必ず見つかるって！ イシェも信じてないのか？」ラーンの目は輝いて、まるで目の前で宝が光っているかのようだ。イシェは苦笑した。「信じてるわけじゃないけど、ラーンがそう言うなら、付き合わなくちゃね。」
テルヘルは静かに二人を見つめていた。彼女には二人のやり取りが理解できないわけではない。しかし、その楽観的な態度こそが、この奇妙な三者関係を成り立たせているのかもしれない。自分にはないものを持っている。彼女は深くため息をついた。
「よし、今日はあの崩れた塔から探検だ！」ラーンの提案にイシェは渋々頷き、テルヘルは冷静に指示を出した。「安全確認を怠らず、特にあの崩落地点付近は注意が必要だ。」
遺跡の入り口に立つと、ラーンはいつものように興奮気味に剣を抜いた。イシェは小さくため息をつきながら、懐から地図を取り出した。テルヘルは後ろから二人を見つめ、何かを企んでいるかのような冷ややかな笑みを浮かべていた。
「よし、行くぞ！」ラーンの声と共に三人は遺跡へと足を踏み入れた。埃っぽい空気が彼らを包み込み、崩れかけた石柱が影を落とす。この遺跡もまた、かつて栄華を極めた文明の残骸に過ぎないのだ。
テルヘルは過去の記憶が脳裏をよぎる。ヴォルダンが全てを奪い去ったあの日。彼女は復讐のため、あらゆる手段を使って力を集め、そしてこの三者関係に利用価値を見出した。
「この遺跡には何かあるはずだ」とラーンが叫びながら石を蹴飛ばす。イシェは地図を広げ、慎重に足取りを確かめる。テルヘルは二人を後ろから見守りながら、心の奥底で復讐の炎を燃やしていた。
過去の影が彼らを追いかけ、未来への希望と絶望が交錯する中、三人は遺跡の奥へと進んでいく。