ラーンが巨大な石の扉の前で足を止めた。イシェが彼を追い越して扉に手を当て、ひび割れた表面を確かめていた。「開けられるか?」ラーンの声は緊張していた。イシェは首を横に振った。「この扉には複雑な仕掛けがあるみたいだ。無理にこじ開けるのは危険だ」
テルヘルは背後から近づき、二つの扉の間に挟まれた隙間を覗き込んだ。「遺跡の入り口を守る仕掛けか。面白い」彼女の視線は冷酷で、どこか楽しげだった。ラーンがイシェに不安そうに目を向けた時、テルヘルは小さく笑った。「安心しろ。私が開け方を知っている」
彼女は satchel から小さな水晶の球を取り出し、扉の上にある複雑な模様を照らした。すると、模様が淡い光で浮かび上がり、扉の表面に刻まれた古代文字が一つ一つ輝き始めた。イシェは目を丸くした。「これは…!」
「古代ヴォルダン語だ」テルヘルは水晶球を操作しながら言った。「この遺跡はヴォルダン人が築いたものだったようだ。そして、この扉には強力な魔法がかかっている」
ラーンの顔色が変わった。「魔法…?まさか…」
テルヘルの目は鋭く光った。「この扉を開ければ、我々を待っているものは、ただの財宝ではないだろう」彼女はゆっくりと水晶球を回した。「そして、その鍵となるのは、お前たちだ」
ラーンはイシェに不安げな視線を送った。イシェは深く息を吸い込み、決意したように頷いた。「わかった。やろう」