ビレーの市場で、イシェが値切り交渉をしていた。ラーンの無計画さに呆れ顔で「もっと安くしろって言えばいいんだよ」とつぶやくと、ラーンは「そんなこと言っても無駄だろ。俺の笑顔と筋肉があれば大丈夫だ!」と豪快に笑った。イシェはため息をつきながら、テルヘルを振り返った。彼女はいつも通り無表情で、周囲を見渡しながら何かを考えているようだった。
最近、テルヘルの態度が少し変わったように見えた。以前は目的達成のためなら手段を選ばなかったが、最近はラーンとイシェのことを気にかけているようだ。特にラーンのことを、まるで...後継者のように扱うような眼差しを向けるときがある。
「よし、これで準備完了だ!」
ラーンの声が響き渡り、イシェの考えは中断された。テルヘルは立ち上がり、「遺跡へ向かう前に、一つ確認したいことがある」と切り出した。「あの遺跡について、詳しい情報はないのか?」
イシェは少し驚いた。テルヘルはいつも計画を立て、事前に情報を集めるタイプだ。今回はなぜ突然、このような質問をするのだろうか?
「あの遺跡は危険だと言われている。特に奥深くには...」
イシェの言葉を遮るように、ラーンが言った。「そんなこと気にすんな!俺たちなら大丈夫だ!」と。イシェはラーンの無謀さに頭を痛めたが、テルヘルの顔色を見つめた。彼女は冷静に言った。
「いいだろう。しかし、今回は特に注意が必要だ。あの遺跡には...何か特別なものが眠っているかもしれない。」