ラーンの大雑把な指示に従い、イシェは慎重に石畳を踏んで進んだ。ビレーの遺跡はいつもと違う静けさだった。普段なら何処かで崩落音がするはずだが、今日は不気味なほど静寂が支配していた。
「なんか変だぞ」イシェが呟くと、ラーンも顔を引きつらげた。「ああ、確かに。何かあったのかもな」。テルヘルは沈黙を守り、鋭い視線で周囲をくまなく見回していた。彼女はいつもより緊張しているようだった。
遺跡の奥深くへと進むにつれ、空気が重くなった。イシェは背筋がぞっとするような感覚に襲われた。まるで何か unseen eyes が彼らをじっと見ているような気がした。
「ここだ」ラーンが言った。「ここには必ず何かあるはずだ」。彼は興奮気味に石の壁を叩き始めた。
テルヘルはラーンの行動をじっと見つめていた。彼女の目は冷酷で、どこか遠くを見つめているようだった。イシェはテルヘルの表情を見て、何かを悟ったような気がした。
「待て」イシェが叫んだ。「何かおかしいぞ」。だがラーンは聞く耳を持たなかった。彼はすでに壁に隠された仕掛けを見つけ、興奮気味に扉を開け始めた。
その時、突然、地面が激しく揺れ始めた。石畳が崩れ、天井から塵埃が降ってきた。ラーンとイシェはバランスを崩し、転げ落ちた。テルヘルだけが冷静に立ち尽くしていた。彼女の顔には、どこか安堵したような表情があった。
「これは…」イシェが言葉を失った。「何だ？」ラーンの声が震えていた。
その時、崩れた壁の中から何かが姿を現した。それは巨大な石像だった。その目は赤く燃え盛っていて、空気を裂くように唸り声を上げた。
「これは…後継者…か」テルヘルが呟いた。「ついに始まった…」