「よし、今回はあの洞窟だ」ラーンの腕が、イシェの肩を叩きながら言った。イシェは溜め息をついた。「またか。あの洞窟は、すでに何度も探索しただろう？」ラーンは目を輝かせ、「でもな、今回は違うんだ！あの奥深くに、何かを感じるんだよ！」と熱く語った。
イシェは冷静に反論する。「感じる、だと？そんな曖昧な理由で危険な遺跡に挑むなんて…」と彼女は言ったが、ラーンの熱意には勝てない。テルヘルも興味を示す。「奥深くに何かがあるというのは、私の情報とも一致する」と彼女は冷たく言った。「では、私は先に進む。お前たちはその後ろについて来い」。
洞窟の入り口は狭く、薄暗い。ラーンが先頭を切り、イシェが後を続く。テルヘルは常に二人を見下ろすように歩いていた。進むにつれて、空気が重くなり、不気味な静けさが漂う。
「何かいるぞ…！」ラーンの声が響き渡った。イシェは緊張して剣を握りしめ、視線を鋭く洞窟の奥に向けた。しかし、そこにいたのは巨大な蜘蛛だった。漆黒の体と、鋭い牙を持つ恐ろしい姿だ。ラーンは慌てて剣を振るうが、蜘蛛は素早く動き、攻撃をかわす。イシェは冷静さを保ち、蜘蛛の動きを分析しながら隙を狙う。
「やめるんだ！」テルヘルが叫びながら、蜘蛛に魔法を放つ。蜘蛛は苦しみ声を上げて後退する。ラーンとイシェは息を切らしながら、蜘蛛の様子を伺っていた。
「よし、これで…」ラーンの言葉が途絶えた。蜘蛛は再び立ち上がり、さらに巨大な姿へと変貌していた。それは、まるで洞窟の奥底から呼び起こされた、邪悪な存在だった。