「おい、イシェ!あの石柱、なんか変じゃねーか?」
ラーンが叫びながら、遺跡の奥深くにある崩れかけた石柱を指差した。イシェはラーンの背後から慎重に近づき、柱の表面を指でなぞった。
「確かに…何か刻まれてるみたいだけど、よく分からん」
イシェは眉間にしわを寄せながら言った。テルヘルは地図を広げ、石柱の位置を確認しながら呟いた。
「ここには何かの仕掛けがあるはずだ。この遺跡の記録によると、ここはかつて『王家の墓』と呼ばれていたらしい。王家の墓に眠る財宝…夢が膨らむな」
ラーンの目は輝き、イシェはため息をついた。テルヘルはそんな二人の様子を冷静に見ながら、石柱に刻まれた紋章を慎重に観察していた。
「これは…」
テルヘルは一瞬言葉を失った。「王家の紋章か…だとすれば、この遺跡には王家の後妻が眠っている可能性もある」
ラーンの顔色が変わった。「後妻?一体どういうことだ?」
テルヘルはゆっくりと口を開いた。
「王家の後妻とは、側室のことであり、王の正妻よりも低い身分であった。しかし、王に愛された後妻の中には、王位継承権を主張する者もいたという。この遺跡には、そんな後妻が眠っている可能性が高い。そして、彼女と共に埋葬された財宝は…」
テルヘルの言葉は途絶えた。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。彼らは、この遺跡に眠る秘密の大きさに圧倒されていた。