「よし、ここだな!」
ラーンの声が響き渡る。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼をじっと見つめていた。目の前には崩れかけた石柱が何本も立ち並び、薄暗い空間全体に不気味な影を落としていた。遺跡探索は危険が伴うものだというのは分かっていたが、ラーンの無計画な行動はいつもイシェの不安を増幅させた。
「また見つけたか? ラーン。」テルヘルが冷めた声で言った。「ここには何もないだろう。」
ラーンは気にせず、石柱を蹴るようにして奥へと進んでいった。イシェはため息をつきながら、テルヘルの後についていくしかいなかった。
「待てよ…」
イシェが何かを察知したように足を止めた。背筋に冷たいものが走った。
「何だ? イシェ。」ラーンが振り返り、不機嫌そうに言った。
イシェは指さすように ahead を向けた。「あの音…聞こえないか?」
確かに、かすかに石が転がるような音がする。そして、それは明らかに彼らがいる場所に向かって近づいてくる音だった。
「何だかわからないが、後ずさりしよう。」テルヘルが剣を抜き、警戒しながら言った。
ラーンも顔色を失い、イシェと後ろへ下がろうとしたその時、石柱の影から何かが姿を現した。巨大な蜘蛛のような怪物が、鋭い牙を剥き出しにして彼らに襲いかかってきた。
ラーンは剣を抜き、必死に抵抗しようとするが、その力は圧倒的に劣勢だった。イシェは恐怖で体が固まってしまった。テルヘルだけが冷静さを保ち、怪物を切り裂こうとした。しかし、その攻撃は空振りした。怪物は素早く動き回り、三人の間を縫うように攻撃を繰り返す。
イシェは絶望的な気持ちに襲われた。逃げようにも、どこへ逃げるべきか分からなかった。その時、ラーンが怪物の足元に飛び込み、剣を深く突き刺した。怪物は一瞬躊躇し、その隙にイシェはテルヘルと一緒に後ずさりした。
「走れ!」テルヘルが叫んだ。
三人は必死に逃げ出した。後ろから聞こえてくる怪物の咆哮は、彼らの背筋を凍りつかせるほどだった。