ラーンが石を投げつけて崩した壁の奥から、埃っぽい光が漏れた。イシェが懐中電灯の光を向けると、そこには複雑な文様が刻まれた金色の扉があった。「こんなもん、ただの飾りじゃないか？」ラーンの声が興奮気味に響く。
「慎重に確かめないと。遺跡の罠は侮れないぞ」イシェはそう言った後、扉の文様をじっと見つめた。「これは…見たことあるような…」
その時、テルヘルが背後から近づき、扉の文様に手を当てた。「ヴォルダンの律法だ。古代の技術を応用した強力な封印術。この扉を開けるには特別な鍵が必要だ」彼女の目は冷酷に光っていた。ラーンは困惑した。「ヴォルダン？ なんでそんな…」
「ヴォルダンと関係がある遺跡を探索するのは危険だ。僕たちに何か企んでいるのかもしれない」イシェが不安そうに言った。しかし、テルヘルは冷静に答えた。「この扉を開けば、ヴォルダンの弱点を知る鍵になるかもしれない。我々は利用するのだ」。そして、彼女はポケットから小さな水晶の容器を取り出した。「これが鍵となるだろう」
水晶の中に浮かぶ青い光は、まるで生きているかのように脈打っていた。イシェが扉に刻まれた文様と比較すると、確かに似たような模様が刻まれていることに気づいた。「これは…一体…」イシェの言葉は途絶えた。テルヘルは水晶を扉に押し当てると、扉に刻まれた文様と水晶の模様が輝き始め、ゆっくりと扉が開き始めた。
その瞬間、ラーンは背筋が凍りつくような感覚を覚えた。扉の向こう側に広がる闇の中に、何か邪悪なものが潜んでいる気がした。「待て！」ラーンの叫びは空虚に響き渡った。扉は完全に開き、その奥へと消えていくテルヘルの影だけが、彼らを不吉な未来へと誘うように残されていた。