ラーンが巨大な石の扉を勢いよく押し開けた。埃っぽい空気が充満し、薄暗い遺跡内部に踏み入れた瞬間、イシェは背筋を凍らせた。いつも通りのラーンの無謀さに呆れながらも、慣れた手つきで焚き火用の薪を取り出した。「また、事前に調査もせずに飛び込んできたのかい?」とイシェが言うと、ラーンはニヤリと笑った。「冒険だ、イシェ!大穴を見つけるには、こういう大胆さも必要なんだ!」
テルヘルは背後から「大穴なんてものは、ただの迷信だ」と冷めた口調で言った。彼女は影のように動き、周囲を警戒していた。彼女の鋭い視線は、壁の亀裂や天井の崩落跡など、些細な変化にも反応していた。ラーンの無茶な行動にはいつも眉間に皺を寄せながらも、どこか彼に依存しているようだった。
「よし、イシェ、お前は照明だ。テルヘル、お前は後ろを固めろ」ラーンの指示に、イシェはため息をついた。「いつも通り、何も考えずに…」と呟きながら、懐中電灯のスイッチを入れた。オレンジ色の光が遺跡の奥深くへと伸びていくにつれ、壁に刻まれた謎の文字や奇妙な模様が目に入ってきた。
深い影の中に潜む何かを感じたのはイシェだった。「ラーン、待て!」と叫んだ瞬間、床が崩れ始めた。ラーンの足元が急に空中に浮き上がり、彼は驚愕の表情でバランスを崩した。
「うっ…」
その時、テルヘルが素早く動き、ラーンの腕を掴んで引き上げた。彼女の影は、崩れた床に落ちていく石ころと共に、一瞬だけ大きく伸びたように見えた。「気をつけろ」とテルヘルは冷たく言った。イシェの心臓は激しく鼓動していた。遺跡の奥深くから、何かが彼らをじっと見つめているような気がした。
ラーンは立ち上がり、埃を払いつつ「よし、行こう!」と言った。だが、イシェは彼の言葉に反応しなかった。彼女は影が濃くなる方向を見つめ、背筋に冷たいものが走った。そこには何かがいる。何か恐ろしいものが、彼らに迫っているのを感じたのだ。