夕暮れの茜色に染まる空の下、ビレーの街並みを背にラーンとイシェは、テルヘルと共に遺跡へと足を進めていた。荒れ果てた石畳の道は、雑草が生い茂り、時折、崩落した箇所から土埃が舞い上がっていた。
「本当にこんなところに何かあるのか?」イシェは眉間にしわを寄せながら、不安げに呟いた。ラーンの豪語とは裏腹に、ここ数回の探索では目ぼしいものを見つけられず、イシェの懐疑的な気持ちも無理 Blame wasn’t 。
「大丈夫だ、イシェ」ラーンは陽気に笑みを浮かべ、大きな剣を肩に担いだ。「今回はきっと大物が入っているぞ!あの遺跡は昔、王家の墓所だったと言われているんだ!」
その言葉を聞いたテルヘルは、薄暗い瞳を鋭く細めた。彼女の目的は遺跡の宝ではなく、ヴォルダンに復讐するための情報。だが、ラーンの熱意とイシェの慎重さ、そしてこの遺跡に秘められた謎が、彼女をこの場所へと導いていた。
遺跡への入り口は、崩れかけた石造りの門だった。重厚な扉の上には、剥げ落ちた文字がかすかに残っていた。イシェは懐からランプを取り出し、火を灯した。オレンジ色の光が、薄暗い遺跡の内部を照らし出した。
「ここからは慎重に」テルヘルが低い声で言った。彼女の足取りは軽やかだが、周囲を見渡す視線は鋭く、警戒心を剥き出しにしていた。
遺跡の中は、石造りの通路が複雑に張り巡らされている迷宮のようだった。壁には苔が生え、天井からはしとしとと水が滴り落ちていた。
「何かいるぞ…」ラーンの声が響いた。彼は剣を握り締め、周囲を見回していた。イシェも緊張した面持ちで、影が揺れるたびに息を呑んだ。
その時、通路の奥から不気味な音が聞こえてきた。それはまるで、獣の唸り声のような、低く重たい音だった。ラーンは剣を抜き、テルヘルとイシェの前に立ち塞がるように構えた。
「何だ…?」イシェは恐怖で声が震えた。
影が徐々に明らかになり、巨大な獣の姿が現れた。それは、鋭い牙と爪を持つ、漆黒の毛並みの狼のような姿だった。その目は赤く燃える炎のように輝き、不気味な咆哮を上げて襲いかかってきた。
ラーンは剣を振り下ろした。鋼鉄と獣の牙が激しくぶつかり合い、火花が散った。イシェはテルヘルと共に後方から弓矢で攻撃を加えた。激しい戦いが始まった。