ビレーの夜空は、いつもより鮮やかに星が輝いていた。ラーンはイシェと共に酒場の一角で、賑やかな騒音を背にしながら杯を傾けていた。
「おい、イシェ、あの星、綺麗だな」
ラーンが指さす方向には、まるで巨大な宝石のように光り輝く彗星が夜空をゆっくりと横切っていた。「ああ、確かに」イシェは小さく頷きながら、ラーンの顔色を窺った。最近、彼はどこか落ち着きがないように見えた。いつもなら遺跡探索の話で盛り上がるところなのに、今日は沈黙がちだ。
「何かあったのか？」イシェが尋ねると、ラーンは苦笑いしながら酒をグイッと一気飲みした。「いや、別に。あの彗星が、俺に何かを伝えようとしてる気がするんだ」
イシェは眉間に皺を寄せた。「そんなわけないだろう。ただの彗星だ」
「そうかな？この街で暮らしている限り、あの彗星はいつも俺の目の前にある。まるで俺を見守っているみたいなんだ」ラーンの目は遠くを向いて、何かを追い求めているようだった。イシェは彼の様子を見て、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。
「ラーン、お前は一体何を考えているんだ？」
その時、店の入り口からテルヘルが入ってきた。黒曜石のように輝く瞳は、いつも通り鋭く周囲を警戒している。「今日は何か用事があるのか？」イシェが尋ねると、テルヘルは小さく頷いた。「次の探索の場所が決まった。ヴォルダンとの国境近くにある遺跡だ。危険だが、そこで古代の武器を見つけられる可能性が高い」
ラーンの目は輝きを取り戻した。「よし、行くぞ！」彼は立ち上がり、イシェとテルヘルに満面の笑みを向けた。彗星が夜空を照らし続ける中、三人は再び遺跡へと向かう準備を始めた。