「おいイシェ、準備はいいか？」ラーンが太い腕を伸ばして剣の柄を掴むと、イシェは小さく頷いた。テルヘルは背後から「遅刻するぞ」と冷たく告げ、視線を遺跡へと向けた。ビレーから少し離れた場所にあるこの遺跡は、いつもよりも雰囲気が重く、静まり返っていた。「何か変だ… 」イシェの言葉がラーンの耳に届いた時、地面が激しく振動し始めた。
「おい！？」ラーンがよろめきながら立ち直ると、目の前には巨大な石柱が崩れ落ちてきていた。テルヘルは素早くその場から飛び去り、イシェは驚愕した表情でラーンの腕を引っ張った。「逃げろ！」
二人はなんとか石柱の下敷きになるのを免れたが、遺跡の奥深くから不気味な光が漏れてきた。「何だあの光…？」ラーンの視線に導かれるように、イシェも光に引き寄せられるように進んでいく。テルヘルは冷静さを保ち、「危険だ。引き返そう」と訴えるが、ラーンとイシェはすでに光に向かって歩んでいた。
「これは…」イシェが言葉を失うほど、遺跡の奥深くには広大な空間が広がっていた。そこには古代文明の遺物や装飾品が山積みになっており、中央には巨大な水晶が輝いていた。「大穴…！」ラーンの目は熱を帯びていた。イシェは警戒心を隠せない。「これは罠かもしれない…」
その時、水晶から不気味な声が響き渡り、空間全体が歪み始めた。ラーンとイシェは互いに目を合わせた。「何だこれは…」イシェの言葉が途絶える前に、空間はさらに歪んでいく。当然、彼らは抵抗する術もなく、光に飲み込まれていった。