「よし、今回はあの崩れかけた塔だな！」
ラーンは遺跡の地図を広げ、興奮気味に言った。イシェはいつものように眉間にしわを寄せながら地図を睨んでいた。
「また危険な場所じゃないのか？ ラーン、あの塔は噂で呪われているって聞いたぞ」
「呪いなんて大したことはないさ！ きっと宝が隠されているに決まってるんだ！」
ラーンの豪快な笑いにイシェはため息をついた。彼にはいつも、ラーンの無謀さに振り回される日々が続いている。しかし、彼の楽観的な性格と仲間への情熱には惹かれるものがあり、結局はついていくことになる。
そこにテルヘルが合流した。「準備はいいか？ 今回はあの塔の奥深くにある部屋に、ある遺物が眠っているという情報を得た」
彼女の言葉にラーンはさらに興奮を募らせ、イシェは当惑した。テルヘルが情報源を明かさないのはいつも通りだが、今回は特に何か隠しているように感じられた。
崩れかけた塔の入り口には、奇妙な文様が刻まれていた。イシェは不吉な予感に襲われたが、ラーンはそんな気配を全く感じずに、意欲的に塔の中へ入っていった。テルヘルは鋭い視線で周囲を警戒しながら後を追った。
塔内部は湿気で充満し、崩れそうな石造りの階段が続くだけだった。イシェは足元に気をつけながら慎重に歩いていく。
「ここには一体何があるんだろうな…」
ラーンの声が響き渡る。彼は常に好奇心旺盛で、遺跡探検を純粋に楽しむことを忘れていない。
しかし、イシェの不安は増すばかりだった。塔の中は不気味な静けさに包まれ、まるで何かが彼らをじっと見つめているようだった。
やがて、彼らは塔の奥深くにある広間へとたどり着いた。そこには、金色の光を放つ巨大な石棺が置かれていた。
「これは…！」
ラーンは目を輝かせながら石棺に近づこうとしたが、テルヘルが彼を制止した。
「待て！ あれに触れる前に確認が必要だ」
テルヘルは慎重に石棺の周囲を調べ始めた。イシェも緊張感に満ちた空気を感じ、ラーンの行動を止めようと口を開きかけたその時、石棺から不気味な光が放たれ、部屋中に広がった。
その瞬間、イシェは激しい頭痛に見舞われた。視界がぼやけていく中、ラーンとテルヘルの姿も歪んで見えた。
そして、イシェは意識を失ってしまった。