「おいラーン、本当にここでいいのか?」イシェの不安げな声がビレーの喧騒を遮った。ラーンの背後から、テルヘルが冷めた目で遺跡の入り口を見つめていた。「この遺跡は古い記録に記されていた。ヴォルダン軍が過去に調査した痕跡もある。何か見つかる可能性が高い」テルヘルの言葉に、ラーンはニヤリと笑った。「そうだな!イシェ、今回は大穴だ!」イシェはため息をつきながら、ラーンの後ろをついていった。
遺跡内部は薄暗く、湿り気を帯びた空気で満たされていた。壁には奇妙な模様が刻まれており、時折不気味に光るものがあった。彼らは慎重に進んでいくが、イシェの足取りは重くなっていった。彼女は最近、ヴォルダン軍によるビレー近郊の村落への襲撃を耳にしていた。残忍な弾圧によって多くの犠牲者が出ているという噂が、彼女の心を蝕んでいた。
「何かあったのか?」ラーンの声に、イシェは我にかえる。「いいえ、何も…」と答えるが、心の中は不安でいっぱいだった。遺跡探索は危険を伴う上に、ヴォルダン軍の影が忍び寄っている今、より一層の恐怖を感じていた。
彼らは遺跡の中腹にある広間にたどり着いた。そこには巨大な石碑がそびえ立ち、その表面には複雑な文字が刻まれていた。テルヘルは興奮気味に石碑を調べ始めた。「これは…!」彼女の顔色が変わった。「これは古代文明の失われた知識を示すものだ!ここに書かれた内容を解読できれば…」
その時、遺跡の入り口から複数の影が現れた。「ヴォルダン軍だ!」ラーンの叫び声が響いた。彼らは武器を構え、イシェたちを囲み込んだ。リーダーは冷酷な笑みを浮かべて言った。「いいものが見つかったようだ。この遺跡と、お前たちの命は全てヴォルダンに捧げられる」
イシェの心は氷のように冷たくなった。彼女は絶望を感じつつも、ラーンの力強い握り手をしっかりと感じた。「諦めないぞ!」ラーンの怒号が響き渡る中、戦いが始まった。