ラーンの豪快な笑い声がビレーの賑やかな市場に響き渡った。イシェは眉間にしわを寄せながら、彼を睨みつけた。「また大穴だなんて、そんな都合のいい話があるわけないでしょう。」
「いや、でもさ、いつか必ず掘り当てられるって信じてんだよ！」ラーンの目は輝いていた。彼の隣でテルヘルは冷静に言った。「今回は慎重に進めよう。遺跡の規模が大きく、未知の罠も考えられる。計画性が必要だ。」
イシェはテルヘルの言葉に頷いた。「私もそう思う。特に今回は報酬が高いからこそ、余計に慎重にならなきゃ。」
3人はビレーから少し離れた場所にある遺跡へ向かった。かつて栄華を誇った文明の名残が、崩れかけた石造りの壁や苔むした階段に残っていた。ラーンは興奮気味に遺跡の中に入ろうとしたが、テルヘルに止められた。「待て。まず周囲を確認しなければならない。」
彼女は慎重に足取りを軽やかにしながら遺跡の周りを歩き、石畳の隙間から生えている草むらを確かめたり、壁に刻まれた文字を指でなぞったりした。イシェはテルヘルの動きをじっと観察し、彼女の鋭い感覚に感心していた。
「ここには何か仕掛けがあるようだ。」テルヘルが静かに言った。「この遺跡はヴォルダン軍が以前調査しており、彼らの残留思念が残っている可能性がある。注意が必要だ。」
ラーンは少し不安そうにしながらも、剣を握りしめ遺跡の中に入った。イシェとテルヘルは彼の後を続いた。遺跡内部は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。壁には奇妙な文様が描かれており、天井からは鍾乳石が下に伸びていた。
「ここは一体何だったんだろう？」ラーンが呟いた。「こんな場所に人が住んでいたなんて想像できない。」
「今は分からない。」テルヘルは冷静に言った。「この遺跡は、かつての文明の知識や技術を秘めている可能性がある。そして、それはヴォルダンにも欲されているものだ。」
イシェは緊張した表情で周囲を見回した。彼女はラーンの無計画さにいつも呆れていたが、今回は彼の弾みが彼自身だけでなく、彼ら3人全員の運命を変えようとしていることを実感していた。
突然、床から冷たい風が吹き出し、ラーンがよろめいた。「何だ！」彼は剣を振りかざして周囲を確認した。しかし、何も見えない。
「罠だ！」テルヘルが叫んだ。
その時、地面が崩れ始め、ラーンは深い穴に落ちていった。イシェとテルヘルは必死に手を伸ばしたが、ラーンの姿は見えなくなってしまった。
「ラーン！」イシェの声が響き渡った。
2人は深い絶望を感じたが、同時に新たな決意を胸に抱いた。彼らを待ち受ける運命を変えるために、この遺跡の謎を解き明かす必要があったのだ。