「よし、今回はあの崩れかけた塔だ。噂によると奥に秘室があるらしい」ラーンが目を輝かせ、地図を広げた。イシェは眉間に皺を寄せた。「また噂話かい?そんな危険な場所に入るのはやめようよ。それに、最近遺跡調査許可の申請も通らなくなってるし」
「そんなこと言わずに、イシェ!今回は大穴が見つかる予感しかしないんだ!」ラーンの熱意に押され、イシェはため息をついた。テルヘルが冷徹な目で二人を見据えた。「準備はいいか。あの塔には危険が潜んでいる。特に、そこの崩れた壁の奥は要注意だ」
ビレーを出発し、荒野を進む一行。夕暮れの赤い光が遺跡に影を落とす。崩れかけた石造りの塔は、かつて栄華を極めた文明の名残を漂わせつつも、今は朽ち果てようとしていた。ラーンは興奮気味に塔の中へ飛び込んだ。イシェは警戒心を強めながら後を追う。テルヘルは静かに周囲を見回し、鋭い眼光で周囲の状況を分析していた。
塔内部は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。崩れた階段を慎重に登っていくと、奥には一枚の石板が壁に埋め込まれているのが見えた。ラーンが石板に触れると、突然床が崩れ始め、三人は深い穴に転落した。
「ぐっ!」ラーンの叫び声が響く。イシェは必死にバランスをとりながら、ラーンを支えた。「大丈夫か?!」
「あいつら、罠を仕掛けてるぞ…」テルヘルが剣を抜き、周囲を見回した。深い穴の底には、奇妙な模様が刻まれた石棺が鎮座していた。棺の上には、漆黒の鎧を着た巨大な影が立っていた。その姿は、まるで生きているかのように脈打つように輝いていた。
「強者」という言葉を口にしたテルヘル。彼女の目は冷酷に光り、剣を高く掲げた。「さあ、準備はいいか?この遺跡の真の姿を見せてやる!」