ビレーの薄暗い酒場に、ラーンとイシェは疲れた顔で戻ってきた。今日の遺跡探索はまたしても空振りに終わり、二人はテーブルに顔を伏せた。テルヘルは静かに酒を傾けながら、二人を見つめていた。
「今日は運が悪かったな」ラーンの声がかすれた。「あの崩れた通路、もう少しで抜けられたのに…」
イシェはため息をついた。「あの石板の罠がなければ…。」
ラーンの肩が大きく揺れた。「ああ、あの石板!あれさえなければ、あの奥にある部屋にたどり着けたはずだ。きっと何かあっただろう。金貨の山でも、宝石でも…」
イシェは眉間にしわを寄せ、「そんな夢見るなよ」と呟いた。「遺跡の罠なんて、常にそこに存在する。運が悪ければ命を落とすこともあるんだぞ」
ラーンの表情が曇った。「そうだな…。」
テルヘルが静かに口を開いた。「二人は疲れているようだ。今日はここで休め。明日は新しい遺跡に挑む。必ず何かが見つかるだろう。」
彼女の言葉は力強く、しかしどこか冷たかった。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。テルヘルの目は、いつも以上に鋭く、そしてどこか張り詰めていた。彼女には何か秘密があるように思えた。
ラーンは立ち上がり、「よし!明日は必ず大穴を掘り当ててやる!」と叫んだ。彼の声は力強く、しかし、その奥底には不安が忍び寄っていた。イシェは小さく頷き、テルヘルの冷たい視線に背を向けた。酒場の灯りが二人を影で包み込み、張り詰めた空気が流れ始めた。