ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑っていた。「おいイシェ、またテルヘルが難題持ち込んできたぞ!今度はヴォルダンと国境近くの遺跡らしい。危険だって!」
イシェは眉間にしわを寄せながら杯を傾けた。「そんなの分かるよ。あの女が言うように、ヴォルダンとの関係悪化は避けられないだろうけど…」
「おいおい、そんな暗いこと言わずに!大穴が見つかるチャンスだぞ!それにテルヘルが言うには、あの遺跡には強力な遺物があるらしいんだ」ラーンの目は輝いていた。
イシェはため息をついた。「あの遺物はヴォルダンに奪われたものなんだって。復讐のために探すんだろ…」。
「ああ、そうだな…」ラーンは少し沈黙した。「でも、俺たちには関係ないだろ?テルヘルが報酬を払う限り、俺たちはリスクを負ってるだけだ」
次の日、遺跡へと向かう道中、イシェはラーンの後ろ姿を見つめた。彼の背中は大きく、逞しく見えた。だが、イシェは彼の無邪気な明るさにどこか不安を感じていた。
遺跡の入り口には、ヴォルダンの紋章が刻まれていた。そこはかつてヴォルダンが支配していた土地であり、多くの弱者たちが苦しんだ場所だった。イシェは背筋に冷たい風を感じるような気がした。
「よし、行こう!」ラーンが先に遺跡へと踏み入れた。イシェは深く息を吸い、ラーンの後に続く。テルヘルが遺跡の奥深くで何かを探している。その目は冷酷であり、目的のためなら手段を選ばないようだった。イシェは、彼女が本当に弱者を救うために戦うのか、それとも復讐のために利用するだけなのか、分からなかった。
「おい、イシェ!こっちだ!」ラーンの声が聞こえた。イシェは慌てて振り返ると、ラーンが奥の部屋へと消えていくのが見えた。その時、突然、地面が崩れ、ラーンは深い穴に落ちてしまった。