「おいラーン、あの石碑、読めるか？」イシェが眉間に皺を寄せながら、苔むした石碑を指さした。ラーンの視線は、石碑の隙間から漏れる薄暗い遺跡内部に釘付けになっていた。
「そんなもん、どうでもいいだろ！ほら、あっちにも何か光ってるぞ！」ラーンはそう言うと、イシェの制止を振り切って奥へと駆け込んでいった。いつも通り、計画性もなく、目の前のものに飛びつく。イシェはため息をつきながら、テルヘルに視線を向けた。「また彼のことですか？」テルヘルは静かに頷き、鋭い目で遺跡の奥へ視線を向けながら言った。「この遺跡、何か隠されている気がする。我々はここにいるべきだ。」
イシェはテルヘルの言葉に少しだけ安心した。彼女にはいつも頼りになる存在だと思えた。だが、同時に、どこか不安も抱いていた。ラーンの無謀な行動が、いつか彼らを危険な目に遭わせるのではないかという恐怖が、常に心の奥底で渦巻いていたのだ。
遺跡内部は暗く湿っていた。足元を照らすイシェのランタンの光は、壁に影を落とすだけで、奥の方は何も見えない。ラーンはすでに姿を消していた。「おい、待て！」イシェが叫んだが、返ってくるのはこだまする自分の声だけだった。
イシェはテルヘルに助けを求めるように見上げた。「彼を止めないと…」テルヘルは冷静に言った。「落ち着いて、彼の行動は予測できる。そして、我々は彼を利用するのだ。」イシェはテルヘルの言葉に少しだけ安心した。だが、ラーンの無謀な行動が、いつか彼らを危険な目に遭わせるのではないかという恐怖が、常に心の奥底で渦巻いていたのだ。
深い闇の中、ラーンの姿が見えた。彼は興奮気味に何かを叫んでいた。「イシェ！テルヘル！見てみろ！これが大穴だ！」彼の叫び声は虚しく響き渡った。そこにあったのは、ただの大きな石塊だった。イシェはがっかりしながら、ラーンに向かって言った。「またか…」
だが、その時、石塊の上から何かが動き出した。それは巨大な影で、ゆっくりと地面に近づいてきた。イシェは息を呑んだ。ラーンの無謀さが、ついに彼らを追い詰めようとしていたのだ。