弓や弦楽器に張る細い糸。

物語への影響例

緊張と調和の象徴。感情の振動と共鳴。繊細さと強さの共存。

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ビレーの朝焼けが、ラーンの寝ぼけた目を刺激した。イシェがいつもより早く起きていた。

「今日はテルヘルさんからの依頼なんだって。何か急らしい様子だった」

イシェはそう言うと、すでに準備を整えていた。ラーンはあくびをしながら起き上がり、剣を手に取った。

「あの女が急いだりしないだろうよ。何だかなんだと騒いだらまた危険な遺跡探しが始まりそうだな」

ラーンの言葉にイシェは苦笑した。テルヘルの依頼は確かに危険なものが多い。だが、報酬も高額で、ビレーでは手に入らない貴重な情報を得られることもあった。

「今回はヴォルダンに近い遺跡らしいよ。テルヘルさん自身も行くようだ。何かあるんだろうな」

イシェの言葉にラーンの表情が曇った。ヴォルダンとの国境は常に緊張状態にあった。遺跡探しも、ヴォルダンの監視下にあり、危険な場所が多かった。

「よし、行こうぜ。早く終わらせて、酒でも飲むか」

ラーンはそう言ってビレーの街を出た。イシェは背後に続くラーンの後ろ姿を見つめながら、何かが張り詰めているような感覚に襲われた。

遺跡へ向かう道中、テルヘルはいつものように寡黙だった。彼女の顔色から、何か重大なことがありそうだとラーンは感じた。

「あの遺跡には、ヴォルダンが何らかの装置を隠しているらしい」

テルヘルは突然そう言った。

「装置?何の装置だ?」

イシェが尋ねると、テルヘルは静かに答えた。

「それは知らない。だが、ヴォルダンがそれを手に入れれば、エンノル連合にとって大きな脅威になる」

テルヘルの言葉にラーンとイシェは息を呑んだ。ヴォルダンとの国境付近の遺跡に、そんな危険な装置が隠されているとは…。

遺跡の入り口に到着した時、ラーンの手には不吉な予感が走った。そこに響き渡る不気味な音色は、まるで何かが彼らを待っているかのようだ。

「あの音は…?」

イシェの声が震えていた。テルヘルは表情を硬くし、剣を握り締めた。

「弦の音だ。ヴォルダンが仕掛けた罠かもしれない」