「おいラーン、今日はあの洞窟に行こうぜ!」イシェが地図を広げながら言った。ラーンの目は輝き、「よし!あの伝説の宝庫だっけ?ついに俺たちの大穴が見つかるかもな!」と、いつものように豪語した。イシェはため息をついた。「また大穴か。そんな簡単に宝は出ないって、何度言ったらわかるの?」
「わかってるよわかってる。でも、いつか必ず見つけるさ!それに、テルヘルさんがいるなら大丈夫だろ?彼女はあのヴォルダンに復讐するって言うくらいだから、きっと何か特別な情報を知ってるはずだ。」ラーンの言葉にイシェは少しだけ安心した。テルヘルは確かに謎が多い。過去を語らず、常に冷静沈着な態度を取っている。
「よし、準備をすませたら出発だ!」ラーンが剣を手に取り、イシェも小さく頷いた。三人はビレーの街を後にし、山道を登り始めた。日が暮れ始めると、洞窟の入り口が見えてきた。
「ここか…」テルヘルが呟いた。「ここはかつてヴォルダンが支配する前に栄えた王国があった場所だ。遺跡には王家の墓所もあるらしい。もしかしたら、何か重要な手がかりが残されているかもしれない。」彼女の目は鋭く光っていた。
洞窟の中は暗くて湿り気があり、足元には石畳が敷かれている。ラーンが先頭を切って進み、イシェとテルヘルが後ろについていく。深い闇に包まれた洞窟の奥深くには、何か不気味なものが潜んでいるような気がした。
「ここは気をつけろ。」テルヘルが警告するように言った。「この遺跡にはトラップが仕掛けられている可能性がある。」ラーンの顔色が少し変わった。「わかったよ、気を付ける。」
彼らは慎重に進んでいくと、ついに王家の墓所を発見した。豪華な装飾が施された石の棺が何基も並んでいる。イシェは少し怖くなったが、ラーンは興奮気味だった。「ついに来たぞ!きっとここで大穴が見つかる!」
彼は棺の一つを開けようと手を伸ばしたが、テルヘルに止められた。「待て!あの記号を見たことがある…」テルヘルは棺の表面にある複雑な模様を指さした。
「これは…ヴォルダンの紋章だ!この墓所はヴォルダンが何かを隠すために作られた可能性が高い!」イシェは驚いて声を上げた。「ヴォルダン?ここで?」
「そうだな…そして、この記号…」テルヘルはさらに別の記号を指さした。「これは…」
彼女の顔が険しくなった。「これは私の弟の紋章だ…」
ラーンとイシェは言葉を失った。テルヘルの過去は謎に包まれていたが、まさかヴォルダンとの関係や弟の存在を知っていたとは…。そして、この遺跡には何らかの秘密が隠されていることは確実だった。