ラーンの粗雑な剣 swing が埃を巻き上げ、遺跡の奥深くへと轟いた。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の後ろをついていった。「本当にこれでいいんだろ? この道、以前から何度も調べてないか?」
「大丈夫だ、大丈夫! 何か感じるんだ、今回はきっと大物があるって」ラーンは自信満々に笑ったが、その目はどこかそわそわしていた。テルヘルは彼らを後ろからじっと見つめていた。彼女の紫の瞳は冷たく鋭く、まるで獲物を狙う獣のようだった。
「この遺跡には何かある。確信がある」彼女は低く呟いた。「そして、それが我々の復讐に繋がる鍵になる。」
イシェはテルヘルの言葉に背筋を寒く感じた。彼女がヴォルダンへの復讐心に燃えているのは知っていたが、その執念の深さはいつも恐ろしさを感じさせた。
彼らは崩れかけた石造りの通路を進んでいった。空気は重く湿り、不気味な静寂に包まれていた。突然、ラーンの足元が崩れ、彼はよろめきながら前に倒れ込んだ。
「くっ…!」
イシェが彼を支えようとした時、壁から何かが飛び出して来た。鋭い牙と爪を持つ獣のような怪物が、唸りを上げながら襲いかかってきた。
ラーンは慌てて剣を抜いたが、その動きは鈍く、怪物に爪痕を付けられる。イシェは素早く弓を引き絞り、矢を放った。矢は怪物に命中したが、わずかな傷跡を残すだけで効果はなかった。
「これは…」イシェの声は震えていた。「ただの獣じゃない…何かが宿っている… 」
テルヘルは冷静さを失わず、両手を広げて魔法の力を発動した。赤い光が彼女の周りで渦巻き、怪物に向かって放たれた。怪物は咆哮を上げながら後ずさったが、すぐに立ち直り、再び襲いかかってきた。
三人は力を合わせて怪物と戦った。ラーンの剣は鈍く、イシェの矢はかすめるだけで効果がない。テルヘルの魔法も怪物には有効打にならなかった。
状況は絶望的だった。彼らは追い詰められ、次々と傷を負っていく。イシェは自分の命が尽きかけていると感じた時、突然、ラーンの剣が光り輝き始めた。それは以前、遺跡で発見した謎の石から放たれる不思議な力だった。
ラーンは目を丸くして剣を見つめた。「これは…!」
彼は剣を振り下ろすと、怪物は一瞬にして塵と化し消えてしまった。
静けさだけが広がっていた。三人は息を切らしながら立ち上がると、互いに顔を見合わせた。
「あれは…一体何だったんだ?」イシェは震える声で尋ねた。
ラーンは何も言わずに、石に宿る力をじっと見つめた。彼の目は、今まで見たことのない強い意志で輝いていた。
テルヘルは彼の様子を見て、何かを感じ取ったようだ。彼女はゆっくりと口を開いた。「この遺跡には、我々が求めるもの以上のものがあるのかもしれない…」