「よし、今回はあの崩れた塔だな!」
ラーンが目を輝かせ、遺跡の地図を広げる。イシェは眉間に皺を寄せながら地図を覗き込む。
「またか、ラーン。あの塔は以前から危険だって言ってるじゃないか。天井が一部崩壊してるし、罠の可能性もある」
ラーンの計画性のない行動に、イシェはいつも頭を悩ませていた。特に遺跡探索ではその傾向が顕著で、危険を顧みない突進ぶりは、イシェにとって大きな不安材料だった。
「大丈夫だ、イシェ!僕たちならなんとかなるさ。それにあの塔には古代の武器が残されているって噂だろ?もしかしたら大穴が見つかるかも!」
ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。彼の楽観的な態度と、その裏にある無謀さに、イシェはいつも引き止めようとする。しかし、ラーンの熱意と仲間への情には、イシェ自身も心を動かされてしまう。
その時、背後から冷酷な声が響き渡った。
「武器か?ならば価値があるかもしれない。我々が同行する。危険を冒すのは嫌だが、成果が見込めるなら話は別だ」
それはテルヘルだった。彼女は常に冷静沈着で、目的のためには手段を選ばないタイプだ。ラーンの無謀さに手を焼いているイシェとは対照的に、テルヘルはラーンの行動をある程度容認していた。
「よし、わかった!テルヘルも一緒なら安心だな!」
ラーンは喜んだが、イシェは不安を感じていた。テルヘルは目的達成のためには手段を選ばない。今回の遺跡探検にも何かしらの思惑があるに違いない。そして、その思惑がラーンと自分たちの安全を脅かす可能性もあるのだ。
イシェはラーンの肩に触れ、静かに言った。
「ラーン、少し待とう。あの塔は本当に危険かもしれない。もう少し他の遺跡を探してみないか?」
しかし、ラーンの心はすでに古代の武器に心を奪われており、イシェの言葉は届かなかった。イシェは深くため息をつき、テルヘルの冷たい視線を感じながら、遺跡へと続く道を歩き始めた。
彼女は、この探検が彼らをどこへ導くのか、不安で胸が締め付けられるのを感じた。