ラーンの粗雑な剣 swing が埃を巻き上げ、薄暗い遺跡の奥深くへ響き渡った。イシェが眉をひそめて「もう少し丁寧に扱わないと、壊れちゃうぞ」と注意したが、ラーンは耳を貸すどころか、興奮気味に「ほら、何かあるぞ！」と叫びながら、崩れかけた石壁の隙間へ飛び込んだ。
イシェはため息をつきながら、テルヘルの方を振り返った。テルヘルは、薄暗い遺跡の中でさえも鋭い視線で周囲を観察し、唇を細く引き締めていた。「この遺跡、何か変だ」と呟いた彼女の言葉に、イシェは頷いた。
いつも通りのラーンの無謀さにイシェは呆れていたが、今回の遺跡にはどこか不気味な雰囲気が漂っていた。埃っぽい空気が重く、石造りの壁からはかすかに冷たい風が吹き抜けてくる。まるで何かが眠りについているかのように静まり返っている。
「おい、ラーン！何か見つけたのか？」イシェの呼びかけに、ラーンの声が奥からかすれて返ってきた。「こっちに来いよ、大物らしいぞ！」
イシェはテルヘルと共に慎重に進む。ラーンの興奮が伝わってくるが、イシェにはどこか不吉な予感がした。石畳の上を歩きながら、イシェは足元に落ちている小さな石片を拾い上げた。それはまるで人間の歯のように尖った形状で、表面には不思議な文様が刻まれていた。
「これは…？」イシェは眉間に皺を寄せた。見たこともない奇妙な石片に、彼女の心は引きつられていた。
その時、突然、遺跡の奥から轟音が響き渡り、地面が激しく揺れた。ラーンの叫び声が聞こえてくる。「気をつけろ！何か来るぞ！」
イシェは恐怖で体が硬直するのを必死に抑え、テルヘルと目を合わせた。彼女の顔色は蒼白だったが、鋭い眼光は恐怖を払拭するように燃えていた。
「準備しろ」テルヘルは低い声で言った。その瞬間、石壁に亀裂が入った。そこから漆黒の影がゆっくりと現れ始めた…。